風の音楽メモ 2004

 

寺井尚子『ジャズ・ワルツ』 


2003.1.28

■寺井尚子『ジャズ・ワルツ』
 TOCJ-68060  03.12.2
 
ジャズとワルツ。
ふつうはその組み合わせをきくことは少ない。
ましてヴァイオリンとジャズは。
 
寺井尚子は、ビル・エヴァンズの「ワルツ・フォー・デビー」をきき
クラシックからジャズへ転向したという。
その「ワルツ」の名前がつけられたアルバム。
かなりの情熱がそこには注ぎ込まれているようだ。
 
寺井尚子という名前を知ったのは今年に入ってからのこと。
きっかけは朝の東京FM「メルセデスベンツスーパーコラム」。
そこで語っていた寺井尚子はそんなに印象深くはなかったのだが、
その「ジャズ・ワルツ」と「ワルツ・フォー・デビー」が
不思議にするするとぼくの心のなかに入り込んでいたらしい。
 
アルバムの最初は、タイトルにもなっている
ショスタコーヴィチの「ジャズ・ワルツ」。
知らなかった。
ショスタコーヴィチはこんな曲も書いていたんだ!
名曲である。
続く曲は寺井尚子のオリジナル「アパッショナータ」。
すでにこれはスタンダードではないだろうか。
CD-EXTRA仕様としてスタジオライブ映像も収録されている。
これがなかなか。
三曲目は「ダニー・ボーイ」、と
ぐんぐんとひきこまれていく。
すべての曲・演奏を素晴らしいと思ったわけではないけれど、
ぼくにはとても新鮮で、
これからもジャズ・ヴァイオリンは
ぼくのなかで一定の場所を占めていくのではないかという気がしている。
 
さて、ビル・エヴァンズの「ワルツ・フォー・デビー」だが、
残念ながらぼくはまだきいたことがない。
ちょうど和田誠+村上春樹の『ポートレイト・イン・ジャズ』(新潮文庫)が
でたところなのだけれど、そのなかのビル・エヴァンズのところで
紹介されているLPジャケットがまさに「ワルツ・フォー・デビー」。
 
        アルバム『ワルツ・フォー・デビー』は、CDではなく、やはり昔ながらに
        体を使ってLPで聴くのが好きだ。このアルバムは片面三曲でひと区切りを
        つけて、針をあげて、物理的にほっとひとつ息をついて、それで本来の『ワ
        ルツ・フォー・デビー』という作品になるのだと僕は考えている。どのトラ
        ックも素晴らしいけれど、僕が好きなのは「マイ・フーリッシュ・ハート」。
        甘い曲、たしかにそうだ。しかしここまで肉体に食い込まれると、もう何も
        言えないというところはある。世界に恋をするというのは、つまりはそうい
        うことではないか。
        (P76)
 
たしかにCDはとても便利で重宝するのだけれど、
表面と裏面がなく「ひと区切り」がつけられないことで
聴くことのなかの何かは確実に失われてしまうような気がする。
せっかくだから『ワルツ・フォー・デビー』は
LPで探してみることにしたいけれど・・・見つかるかな。
 
 


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