■サン=サーンス 交響曲第3番 ハ短調作品78<オルガン付き> パリ・バスティーユ管弦楽団 指揮:チョン・ミュンフン 録音1991年10月 パリ Deutsche Grammophone UCCG-9453 サン=サーンスといえば、学校の音楽の授業などでも おきまりの『動物の謝肉祭』くらいしか知らなかったが、 シャルル・ミュンシュ指揮・ロンドンシンフォニーオーケストラ、 コルトーのピアノによるピアノコンチェルト第4番(1935年)を聴いてから その音色に惹かれ、シンフォニーを聴いてみようと物色していたところ、 このチョン・ミュンフン指揮による交響曲第3番を見つけた。 本間ひろむの『指揮者の名盤』の第6章、 「洒脱なエスプリーーフランス・ベルギー系指揮者」の最初に、 小澤征爾『ボクの音楽武者修行』の次の箇所が引用されている。 フランスのオーケストラは、えてしてアンサンブルがわるいとされ ている。これは事実だ。しかし、ドイツあるいはそのほかの国にい て、パリに帰ってきてフランスのオーケストラに接すると、まず感 じることは、そのオーケストラのもっている輝き、色彩感、あるい は音のみずみずしさーーそれはもうアンサンブルがわるいとか、音 程が合ってないとかいうようなことを忘れさせ、オーケストラから 出てくる音の輝かしさ、あるいは色彩感に、ぼくはまず魅了されて しまう それで、手元にある「TEH 20TH CENTURY MAESTROS」のなかから ピエール・モントゥ、シャルル・ミュンシュなどを聴き、 そのなかでとくにシャルル・ミュンシュ指揮による ピアノコンチェルト第4番の美しさに魅了されたのをきっかけに サン=サーンスをもっと聴いてみたいと思ったわけである。 『指揮者の名盤』のなかでは、交響曲第3番は ジャン・マルティノンの演奏が紹介されていたが、 生憎それがみつからず、シャルル・ミュンシュのものか、 以前から気になっていたチョン・ミュンフンのものか迷ったあげく、 メシアンの『キリストの昇天』がカップリングされている チョン・ミュンフンのものを選ぶことにしたが、 とても色彩豊かな素晴らしい演奏に魅了された。 ドビュッシーもそうだが、やはりフランスものを フランスものを得意とした演奏家で演奏するのは ほんとうに色彩感豊かでとても輝かしい音を持っているように感じる。 これはドイツものとはまた別の耳を開く喜びがある。 武満徹もドビュッシーに深く影響されているが、 武満徹の音楽のあの独特な響きのひとつの淵源は こうしたフランスならではの音の響きがあるのだろう。 サン=サーンスのことはまだよく知らないままだけれど、 ストラヴィンスキーはサン=サーンスのことを 「辛辣な小男」と言ったらしいが、 リストは「作曲しているとき、私はよく自問する、 サン=サーンスはこれを気に入ってくれるだろうか、と」 と書いているらしい。 そしてこの交響曲第3番の献辞は 「フランツ・リストの思い出に捧げる」とある。 すでにこの交響曲第3番を何度か繰り返し聴いているが、 その音色のすばらしさのなかにとけていきたいような そんな気持ちになってくるところがある。 こうして新たな「耳」を開いていくのはほんとうにうれしい。 しばらくはフランスものにセンサーを向ける機会もふえそうだ。 チョン・ミュンフンの指揮も要注目である。 |
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