風の音楽メモ 2004

  

有田正広:世紀を超えるフルート 


2004.2.26

■有田正広:世紀を超えるフルート
 AVCL-25004 04.1.21
 
デンオン・アリアーレ・シリーズの「有田正広と仲間たち」は
どれも有元利夫のジャケットが印象に残るが、
(ぼくが有元利夫の絵に親しむようになったのもこのシリーズのおかげ)
今回の3年ぶりの新録音は、ジャケットに
有田正広がフラウトトラヴェルソを吹く写真が使われている。
いや、「吹く」のではなく、おそらくその音は
どこかから訪れてそこに響いている。
 
はじめて生演奏をきいたときの感動は
今も生々しくおぼえている。
ほとんどきこえない音でさえも
その無にかぎりなく近い響きが
そこにいるぼくにたしかに届いてくる不思議。
すでにそれは物理的な音というよりも
音エーテルのようなかたちでの場の変容だともいえるのかもしれない。
フルートは息の戯れそのものなのかもしれず
その息そのものがその管を通してなにかを招き寄せるのだろうか。
その管はおそらくクラインの壺のように
この三次元を超えたどこかにつながっているとさえ思える。
 
その演奏会ではただ演奏されるのではなく、
演奏される音楽や演奏に使われている楽器について
授業でも受けているようにちゃんと解説が加えられた。
そしてそれが決して聴くことの妨げになるどころか
生きた聴き方のできるようなサポートにもなっている。
解説が加えられることで演奏が理屈っぽくなるかといえば
決してそういうことにはならない。
演奏は静かでしかも熱い。
 
この1ヶ月ほど、何度も繰り返しこのCDを聴いている。
有田正広のCDは最近はあまりきかずにいたのだけれど、
久々に聴く演奏だからなのか、今回の演奏の熱のせいなのか、
聴くたびにいつもまるではじめてきいたような静かな感動を味わえる。
決して汲み尽されることのない、
常に湧きだし続けるような泉のような音楽。
こんなフルートの音色というのはほかではなかなか聴けるものではない。
これからもその演奏には注目していきたいと思っている。
久しぶりに手元にあるデンオン・アリアーレ・シリーズを
聴きなおしてみることにしたい。
また新しい発見があるはずだから。
 


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