風の音楽メモ 2004

  

武満徹:ジェモー、夢想、精霊の庭 


2004.4.16

■武満徹:ジェモー、夢想、精霊の庭
 若杉弘指揮・東京交響楽団
 DENON COCO-70662  04.3.24
 
ここに収められた3作は「庭」をテーマにしているという。
「夢想」は「夢想疎石」にちなんでそのタイトルがあり、
「武満徹著作集5」に収められているプログラム・ノーツによれば、
その夢想疎石よる京都の庭に想を得ている。
「精霊の庭」も「庭の作曲法」に依っている。
「ジェモー」は直接的に庭と関係していないものの、
オーケストラを楽器や演奏者が全体を構成する庭であることからきている。
他に「庭」のシリーズとしては、「ガーデン・レイン」、
「鳥は星形の庭に降りる」などがある。
 
武満徹の音楽を無性に聴きたくなるときがある。
というのは以前も書いたことがあると思うが、
この1ヶ月ほどの転勤・引越をめぐる慌ただしさのなかで
ともすればぼくの感情と思考はバランスを失いかけることもあって、
音楽をじっくり聴くというような余裕もあまり持てないだけに、
ちょうどDENON の「クレスト1000」シリーズとして発売された
この武満徹の作品を見つけたときに、
自分がまた武満徹の音楽を必要としているのを切に感じた。
しかも「夢想疎石」にちなんだらしい「夢想」という曲も収録されている。
作庭においてもエポックである夢想疎石。
 
私たちは自分のなかに「庭」をもっているのだといえないか。
その「庭」が今どのような場所になっているか。
その庭をどう見ているのか、庭において私たちはどうあるのか。
私の内的宇宙としての庭にはそれを構成するさまざまがあって、
箱庭療法ではないが、その「トポス」のなかに置かれた
さまざまなものの配置がどのようであり、
それがどのように変化しているのかをじっと見てみる必要もあるのだろう。
 
今朝、あらためてこの「庭」の音楽を聴いていた。
ようやくそういう時間を持てるようになってきているともいえるのだが、
ぼくのなかでようやく新しい「庭」が静かに
浮かび上がってくるのを見ることができたように感じていた。
そしてその庭を構成するさまざまや空気、風、
その庭に飛来してくる鳥たちの姿も。
 


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