風の音楽メモ 2004

矢野顕子とレイ・ハラカミ


2004.11.4

●矢野顕子とレイ・ハラカミ
 
矢野顕子の新譜『ホントのきもち』が10月27日に発売された。
早速何度も繰り返しきいているが、とてもとても豊かな気持ちになる。
 
■矢野顕子『ホントのきもち』YCCW-10009
 
『SUPER FOLKSONG』にはじまる孤高のピアノ弾き語りも大好きだけれど、
ここにはとても新しい響きがさらに加わっている。
 
今回は、岸田繁(くるり)とレイ・ハラカミが参加しているが、
この両者、ぼくには今回が初耳である。
とくに「エレクトロニカ・アーティスト」だという
レイ・ハラカミの音づくりがすばらしいので、
そのアルバムも聴いてみることにした。
 
■rei harakami『opa*q』 Sublime Records MKCS-1019 1999.02.24
■rei harakami『red curb』 Sublime Records IDCS-1004 2001.04.25
 
ナチュラルな音ばかりを持ち上げて、電子音を馬鹿にしていると
ほんとうは自分がとんだ馬鹿になるのではないかとさえ思わせるのに
とても説得力のある電子音の可能性がここにはある。
これは、舟沢虫雄さんの音づくりについてもいえることだ。
 
TOWER RECORDSの出している「bounce」の259 2004/11の48ページに
矢野顕子とレイ・ハラカミへのインタビューが載っている。
そこから少しメモしておくことにしたい。
 
	矢野顕子「2002年の10月くらいにくるりの“ばらの花”のレイ・ハラカミ・
	ミックスを聴きまして、一度で度肝を抜かれまして。それでぜひこの人と
	何かやってみたいと思いました。とにかく最初の2、4小節だけでもう、
	<あ、私は天才を発見した>と確信しておりました。
	 ただものではない、と手放しで賞賛を惜しまない彼女だが、一方ハラカ
	ミのなかでも彼女は憧れの存在だったという。」
	レイ・ハラカミ「だってずっと聴いてきてますからね、コード感とか間違
	いなく影響を受けている。矢野さんみたいって言われたこともありますよ。
	それはしょうがないですよ、10代の時から聴いてるんですから」
	・・・
	レイ・ハラカミ「矢野さんのメロディーの移り変わりの奇妙なことといっ
	たら!なんでそんなに転調するのよ!みたいな。音楽的にはエキセントリ
	ックなことをやっているのに、矢野さんのメロで歌われるとまったく普通
	にスーッと聴こえるんです。むちゃくちゃ時間がかかりましたけれど、出
	来たときはすごく嬉しかったです」
 
たしかに、レイ・ハラカミの音づくりの不思議な変化の連続と
その気持ちよさというのは、矢野顕子ににているのかもしれない。
 
やはり、新しい音の可能性を目の当たりにするというのはうれしい。
そして、矢野顕子も立ち止まってはいないし、
もちろん、レイ・ハラカミも決して立ち止まったりはしない。
 
アルバム『opa*q』の解説(ネイシャン)のなかにこんなところがある。
 
	異端児はしかし、人知れず悩みもする。ハラカミの生活の中の課題は、
	“死ぬまで悩み続けられるか”。
 
ゲーテのことばだったかに、人は努力するかぎり悩む、とかいうのがあったが、
音楽づくりもどんどん悩んでもらえたら、また新しい音が聴ける。
こんなうれしいことはない。
 
さて、矢野顕子ファンならご存じだと思うのだけれど、
まだの方は、ぜひ少し前の「ほぼ日」の「矢野顕子感謝祭」の企画には
目を通しておいてほしい。感動の記録だから。
http://www.1101.com/yano/index.html
最初から読んで、「グランドフィナーレ」まできたときに
こんなに泣ける読み物もなかなかない。」
 
 


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