風の音楽メモ 2004-2005


細川俊夫:Gagaku/Deep Silence


2005.3.14.

■細川俊夫:Gagaku/Deep Silence
 WERGO  WER68012
 
昨年の暮れに、ここでもご紹介した細川俊夫の『回帰』が
現代音楽の部門で日本のなにかのレコード賞を受賞していたが、
それはfontecから発売されている細川俊夫のCDアルバムの9枚目だった。
 
あらためて気づいたのだけれど、ぼくの必ず購入したいと思っているCDは、
BCJのバッハ・カンタータ演奏シリーズ(現在26枚発売)と
舟沢虫雄さんのもの(店頭発売されていないものを除く)と
この細川俊夫のCDくらいである。
 
で、細川俊夫のCDはfontecから発売されると思っていたら、
フェイントのように、WERGOというところから「雅楽」のCDが発売されていた。
ほとんどどこにも紹介されていたかったので、悪くすると気づけずにいたかも しれないが、
タワーレコードが隔月刊で発行しているintoxicateという情報誌のほんの隅っこに
小さなスペースで紹介されているのを運良く見つけることができた。
しかしもちろん店頭には置いているはずもないし、
注文しても輸入物になるのでいつ届くかわからないという。
それでも聴かないわけにはいかないので、1ヶ月以上かかって取り寄せた。
 
これまでにこういうアルバムがでていてもおかしくないとは思うのだけれど、
ようやく満を持したという感じの「雅楽」である。
アルバムのタイトルも直球勝負の「雅楽」ときている。
宮田まゆみが笙を、ステファン・フッソングがアコーディオンを演奏している。
宮田まゆみは定番という感じだけれど、ステファン・フッソングというのは初耳だ。
これまで笙とアコーディオンの親近性とかを意識したことはないのだけれど、
ぞくぞくするほどその両者の音が怪しく絡んでくる。
 
この雅楽がぼくの知る限りでは、細川俊夫の10枚目のアルバムになる。
記念すべきといったほうがいいかもしれない。
きわめてシンプルだけれど、音の向こうにある、
というより音の底にあるものがどこからか響いてくるようなそんな「雅楽」だ。
 
サブ・タイトルに「Deep Silence」とあるが、
静寂というのは音がしないから静寂なのではなくて、
おそらく音の底を深みをDeepに抉り掘り下げていくことで
はじめて響いてくるのだろう。
音のホメオパシーのような感じかもしれない。
音が希釈されていきあるところで音が虚の領域に向かって
Deepに延びて響いてくるという感じ。
それとも、日の光に対して月の光というか。
 
ときおり、耳をすませて、
空間と時間を超えたところからやってくる
かすかなかすかな声をききたいと切に思うときがあるが、
これはその声の触媒のような響きともいえるのかもしれない。
 
 


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