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昨年の暮れ以来、鈴木雅明のバッハ・カンタータを聴いて以来、バッハのカンタータばかりを集中的に聞いていて、それ以外のものはそこそこに、といった状況になっていたのですが、昨夜(9日)、武久源造のチェンバロ演奏を聴いて、ぶっとんでしまいました。
武久源造というのは、ここ(松山)の出身でぼくと同い年ということは知っていてそのオルガン演奏のCDを聴いたことはあったのですが、そのチェンバロの演奏を実際に聴いて、そのすごさに圧倒されたわけです。今回のコンサートには、ヴィオラ・ガンバの演奏で有名な平尾雅子も参加されていてどちらかというと、そちらを目当てにして聴きにいったのですが、平尾雅子の演奏がいいのは当然としても、むしろ、武久源造のチェンバロ演奏のほうに驚かされてしまったのです。こういう演奏を聴いてしまうと、これまで聴いてたチェンバロ演奏がいったい何だったんだろうという気になってしまっています。
どう形容していいかわからないのですが、もう音楽が宇宙になってしまっているというかひとつひとつの音が壮大な彫刻のようになっていて、しかも固定的ではなく、呼吸している宇宙のようなそんな姿で現われてくるというか。こんな天才的な演奏家が、日本、それも身近にいるということに、なんだか、この時代に生まれていてよかったという気にもなっています。
鈴木雅明のバッハ・カンタータはこれからも楽しみに聴いてくとして、これに加えて、この武久源造のチェンバロ、オルガンも楽しみになりそうです。もちろん、有田正弘のフラウトトラヴェルソ、先の平尾雅子ビオラ・ダ・ガンバと現代の日本の音楽状況は、これからもますます期待できそうです。それに比べて、歌謡曲というかポップスやロックの貧しさを思うと情けないですが、ま、そのうちその方面にも何か新しい動きがでてくるのかもしれません。
ちなみに手元にある武久源造と平尾雅子のCDをご紹介しておきます。
■武久源造:鍵盤音楽の領域vol.1 ALCD-1001
■武久源造:鍵盤音楽の領域vol.2 ALCD-1003
■武久源造:シフォーチの別れ/チェンバロによるアリア集 AEO-501
■平尾雅子:アラン・マレの横顔 ALCD-1010
■米良美一「母の唄〜日本歌曲集」KICC 202
この米良美一(めらよしかず)は、鈴木雅明のバッハ・コレギウム・ジャパンのバッハのカンタータ演奏などでカウンターテナーをつとめているのですが、その素晴らしさはちょっと形容できないほどのものです。
ちょうど、このCDの発売とほぼ同時に、待ちに待った
■バッハ・コレギウム・ジャパン/カンタータ全曲シリーズ3
KKCC2224(鈴木雅明指揮)
が発売されたのですが、そのなかでも、この米良美一のカウンターテナーはその持ち味を十分に発揮でしているように思います。
その米良美一が、ぼくの予想を大きく裏切って発売したのが、今回の日本歌曲集で、最初は、「なぜ、あの素晴らしいカウンターテナーが日本歌曲を・・・」という疑問でいっぱいになったのですが、疑問だけにしておくのもなんなので、早速、それを実際に聴いてみたわけですが、それで、またうなってしまいました。
収められている曲は、まさに有名な「日本歌曲」ばかりなのですが、まあ、こんなに美しい曲があっていいものか・・・と今は、うれしい驚きでいっぱいです。
日本の音楽シーンは、歌謡曲やロックなどをふくめてあまりぱっとしませんが、こうした、少し地味なところなどでがんばっている天才たちの存在を知ると、少しばかりイメージが変わってきそうです。
そうそう、先日、ぼくの友人の声楽家(ソプラノ)がぼくの地元で、リサイタルを開いたのですが、そのときにピアノ伴奏として、その声楽家のウィーン時代の友人で、作曲家でもある三ツ石潤司という、現在ウィーン国立音楽大学の講師をしている方を招きました。
プログラムのなかには、この三ツ石潤司の作曲した声楽曲もはいっていて、その素晴らしさに驚かされたのですが、そういう才能のある方が、地道にがんばってこられているんだなあと、ここでも音楽シーンに対する光のようなものを感じたりしました。この方とは、リハーサルから打ち上げをふくめてけっきょくいろいろお話したのですがとっても気さくな楽しい方でしたし、趣味や感じ方まで、ぼくとかなり共通点があったりして、とってもうれしい時間になりました。
話がわき道にそれましたが、ここ数年はとくに、その友人の声楽家の影響もあって、人の声の魅力に魅せられていたところに、この日本人のカウンターテナーの登場。なかなかおもしろくなってきそうです(^^)。
■ギドン・クレーメル/ピアソラへのオマージュ(WPCS-5070/'96.11.10発売)
ギドン・クレーメルといえば、奇才のバイオリニストとして有名だけれど、このアルバムは、アルゼンチンのアストル・ピアソラの音楽(タンゴ)をギドン・クレーメルのバイオリンをはじめバンドネオン、ピアノ、コントラバスなどの編成で演奏したもの。
すでに100枚以上のアルバムを出しているギドン・クレーメル自身が、「最高の誇りを持っているのは、ピアソラのニューアルバムです」と語っていたそうだが、なるほどこれはスリリングなまでに聴かせる。
これは、まぎれもない「タンゴ」なのだ、まさしく「タンゴ」。けれど、そのラテンアメリカの匂いのする、ともすれば単なる大衆音楽でしかない「タンゴ」が、これほどまでに音楽している!のは驚きだ。バンドネオンが、こんなにまで繊細な楽器だとは。少し間違えば、単なる場末の音楽にでもなりかねないような香りを引きずりながら、それゆえに危うい官能性などに満ちている、この不思議な音色たち。
昨年の暮れから今年にかけて、バッハのカンタータを中心に聴いてきたのだが、ここにきて、アストル・ピアソラというラテン・アメリカの作曲家をこのアルバムで知ることができて、また新たな音楽世界に浸れそうな予感がする。
このアルバムは、この秋、最高のお勧め。これだけは、聴いておきたい1枚だ。
■ヴァネッサ・ウィリアムス「アルフィー」PHDR-152
TBS系の金曜ドラマの「協奏曲」の主題歌です。「協奏曲」は、キムタクと田村正和、宮沢りえの主演のドラマなのですが、ぼくにはめずらしく毎週なぜか見てしまっていて、その主題歌が気に入ってCDを買って聴いてたりします^^;。
ぼくは70年代前半の頃のポップスやロックを聴いて育ったせいか、最近の音楽の多くに典型的なメロディーも声もリズムも、心地よく聴ける類のものとはいえません。なんだか、音楽というよりは、単なるパフォーマンスに近いものという感じが強くてわざわざ聴くに値しないものというイメージが強くあります。だから、今聴いてるのはほとんどクラシックのジャンルのものばかりで、かつて山のように聴いていたジャズさえ今ではあまり聴かなくなってしまっています。
さて、ヴァネッサ・ウィリアムス「アルフィー」ですが、なつかしい感じのメロディーだと思っていたら、バート・バカラックのものだったんですね。こういう音楽ばかり聴いてると、頭が溶けてしまいかねませんが^^;、騒がしいだけの音楽のなかに、こういうのが流れてくると、とても落ちついてきてやさしい気持ちになれたりします。
そういえば、70年代初期あたりは、こういう類の音楽とそれと対極的なディープ・パープルやローリング・ストーンズなどのものを気分にあわせて聴いていたことを思い出しました。
ついでにテレビドラマについてですが、オードリー・ヘップバーンを意識しまわった宮沢りえはともかくとして^^;、キムタクと田村正和の不思議な組み合わせがとても気に入っていたりします(^^)。二人が、「天に向かう建築」のことを夢見るように語るシーンなど、特にいいです。
ま、あえていえば、これをみながら、シュタイナーの建築に関するあれこれをあらためてちゃんと見てみようかなと思ったりもしているのですが、そんなこととは関係なく、たまにはこういうドラマでもみながら、気持ちいい音楽の雰囲気を楽しむのもいいかな、というところです。
そうそう、ヴァネッサ・ウィリアムスの
■ベスト・オブ・ヴァネッサ・ウィリアムスPHCR-1485
というアルバムが、12月9日に発売されるのだそうです。たぶん、「アルフィー」が気に入っている方なら、楽しめるのではないでしょうか。
■ディートリヒ・フィッシャー・ディスカウ
「シューベルトを歌う」(NHK趣味百科)
・テキスト/日本放送出版協会
・放送/1997.1.9〜4.4
毎週木曜日 午後9:25〜9:55
再放送 毎週金曜日 午後3:30〜4:00
まだ放送は始まってないのですが、NHKの趣味百科で、あのバリトンの名手、フィッシャー・ディスカウが講師の「シューベルトを歌う」が始まります。
数年前だと、こうした歌曲(リート)などはほとんど聞かなかったのですが、友人の影響と、バッハのカンタータに衝撃を受けて以来、特にこの一年は、「声」の素晴らしさに感動しつづけています。特に大ファンになったのが、米良美一というカウンターテナーで、もうなんといっていいのか、ぶっとんでしまうような声に魅せられ続けています。
さてそれで、折良く、今年早々から、あのフィッシャー・ディスカウを講師としてシューベルトの歌曲の指導がテレビで見られることになりましたので、明日からさっそく見るつもりでいます。
NHKのこうした音楽の番組でいえば、一昨年、ゴルノスターエヴァがピアノを指導したのを見て、もう涙がとまらないくらいに感動して、それ以来、音楽の受けとめ方が変わってしまったといっていいくらいでした。
そして、昨年は、それまで半ば拒否して聞かなかった歌曲に感動し始め、バッハのカンタータや受難曲などを聴きあさったりすることになりました。こうした時期にこういう番組がはじまるなんて、とてもラッキー、ということで今年の初めの「風の音楽室」のご挨拶に代えさせていただきますm(__)m。
フィッシャー・ディスカウの「シューベルトを歌う」のご紹介に続いては、コントラルトで昨年話題を呼んだ(らしい)シュトゥッツマンのシューマン歌曲集です。
■ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト) BVCC-740
インゲル・ゼーデルグレン(ピアノ)
シューマン歌曲全集III ケルナー歌曲集&愛の春
愛の相聞歌(ミンネシュピール)
このCDは、平成8年度(第34回)レコード・アカデミー賞の声楽曲部門で見事受賞したものです。実は、それまであまり知らなくて^^;、レコード芸術の1月号の「レコード・アカデミー賞」の記事を見て興味を覚えたので聴いてみたわけです。
それが、なかなかよかったので、ここでおすすめしてみようと思いました。ちなみに、最近ぼくがメゾ・ソプラノ、コントラルトで注目しているアンネ・ソフィー・フォン・オッターも、同じくシューマンの「女の愛と生涯」他の歌曲集のCDが今回の声楽部門にノミネートされてたのですがこれもまたなかなかの出来でした。
フィッシャー・ディスカウの「シューベルトを歌う」のことをご紹介しましたがシューベルトもいいけど、シューマンもなかなかいいですので、もし聴いてみようという方がいらっしゃいましたら、ぜひ。
■アンネ・ソフィー・フォン・オッター(メゾ・ソプラノ)
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
北ドイツ放送交響楽団
マーラー:さすらう若人の歌/リュッケルトの詩による5つの歌曲
ツェムリンスキー:メーテルランクの詩による6つの歌曲
POCG10005 1996/12/21発売
やはり、マーラーは天才である。そして、オッターは絶品であり、ガーディナーも素晴らしい。もっとも、マーラーの先生であるツェムリンスキーをマーラーと比較するとやはり正直言って見劣り、いや聴き劣りがする。
最近は、オッターの声をよく聴く。そして、感嘆しなかったことがない。これほどの醒めた知性と秘めた情熱を兼ね備えた声はまれだ。
CDを聴いていて、最後に収められているリュッケルトの詩による5つの歌曲の5曲目に、思わず声にならない感動の声が自分の内から静かにわき上がってくるのがわかった。
余談だが、シュタイナーは、ドイツのワイマールで、マーラーが指揮者としてはじめて登場するのに立ち会っている。
(「シュタイナー自伝II」P59)
たとえば、ある音楽祭には新進指揮者マーラーが登場した。彼がタクトを振ったときの光景は、今なお鮮やかに瞼に焼き付いている。彼は音楽を形式の流れに合わせて指揮するのではなく、超感覚的な隠された存在の体験としての音楽の形式のまにまに、味わい深い山場を生み出していた。」
シューベルト生誕200年ということで、NHKテレビでも、フィッシャーディスカウの講師によるレッスンの番組があり終了したところなのですが、そういう関係もおそらくあって、
このところ、シューベルトの音楽をいろいろ聴いています。
未完成交響曲もかなり繰り返し聴きましたが、今はピアノ曲をよく聴いています。そのなかでも、やはり聴き逃すことのできないと思ったのは、
■ピアノソナタ19番(D958)・20番(D959)・21番(D960)
■即興曲
で、即興曲に関しては、「風遊戯115」でもそのイメージを言葉にしてみました(^^)。
また、相棒によりますと、ピアノソナタの20番と21番の2楽章は、それぞれ、マタイ福音書、ヨハネ福音書のイメージがあるということで、そういうふうに聴いてみると、なるほどそのイメージがあると感じました。ちなみに、マタイ福音書は十字架を背負って歩くイエス、天幕の裂けるイメージ、ヨハネ福音書は、秘儀が成就した!というイメージです。胸の奥まで染みてくる感動がいつまでも消えない希有な曲ではないでしょうか。
ちなみに、演奏はケンプ(Wlhhelm Kempff)、即興曲に関しては、最近新譜としてだされた内田光子のもの(PHCP-1818)も素晴らしいのではないでしょうか。
内田光子の新譜、シューベルトのピアノソナタが出ました。
いつまでもいつまでも聴いていたい音楽。内田光子のシューベルト演奏は、そんな音楽を聴かせてくれます。
■内田光子 ピアノ・ソナタ15番 ハ長調 D.840 <レリーク> PHCP-11009
ピアノ・ソナタ18番 ト長調 D.894 <幻想>
前回、シューベルトの生誕200周年の1月31日に発売された内田光子のシューベルト「即興曲集」を少しだけご紹介しました。その演奏もすばらしいものでしたが、今回の演奏も抜群の出来です。参考までに、それもご紹介しておきます。
■内田光子 即興曲集 作品90 D.899 PHCP-1818
作品142 D.935
待望の鈴木雅明指揮によるバッハのカンタータ全曲シリーズの第4弾がいよいよ発売されました。
■バッハ・コレギウム・ジャパン (BIS-CD-801)
カンタータ全曲シリーズ Vol.4
〜ワイマール時代のカンタータ2〜
指揮:鈴木雅明
ソプラノ:鈴木美登里、柳沢亜紀
アルト(カウンターテナー):太刀川昭
テノール:桜田亮
バス:シュテファン・シュレッケンベルガー
ここ数年、バッハのカンタータに凝っているぼくとしては、何はともあれ聴かずにはおけないシリーズになっているのがこの鈴木雅明指揮のバッハ・コレギウム・ジャパンのそれです。
コープマンのバッハ全曲録音のシリーズもばかすかでてますけど、そちらのほうは、どうも明るすぎて、精神が入っていない感じがしていまいち好きになれないところがあるのですけど、バッハ・コレギウム・ジャパンのシリーズは相変わらずダントツの魅力があります。
今回は、残念ながらカウンターテナーの米良美一、バスのペーター・コーイが参加してないので、少し物足りない感じもするのですけど、カウンターテナーの太刀川昭がなかなかの魅力的な声なのに加えて、相変わらずテノールの桜田亮が素晴らしいです。ただ、バスのシュテファン・シュレッケンベルガーがなんだかキレが悪くてムードに走ってしまっている印象がありました(残念)。