「風の音楽室」に登録してあるいちばん古いものは たしか「倍音唱法と言霊」(93/05/11)だったように記憶している。 その二年くらいまえにデヴィッド・ハイクスなどで話題になった「ホーミー」などについて 中野純「日本人の鳴き声」(NTT出版)という面白い本がでたのをきっかけに いろいろ思いつくことを書いたものだった。 今や知る人ぞ知る「ホーミー」。 モンゴルの民俗音楽のCDなどにも収められていたりするようにもなったが、 その後、あの巻上公一がそのホーミーを紹介しているのを知った。 さすがは世紀の「声」の魔術師、巻上公一である。 巻上公一をはじめて知ったのは、ヒカシューの「うわさの人類」というアルバム。 その不思議な声はだれでも一度きくと決して忘れることのできないほどのもの。 その巻上公一が糸井重里、鈴木松美(日本音響研究書所長)と鼎談している「声のお話」というのが、 糸井重里『経験を盗め』(中央公論新社/2002.8.7発行)に収められているのだけれど、 今度は同じく糸井重里の「ほぼ日刊イトイ新聞」の連載 E.TANAKAこと田中宏和による「感心力がビジネスを変える」のシリーズで、 その話がホーミーなどのMP3データなどを聞きながら読むことができる。 タイトルは「声は鍛えられる」。 http://www.1101.com/e_tanaka/index.html この記事でも知ることができるが、巻上公一は田口ランディと 「アルタイから歌手を呼んでのコンサート」を企画している。 (朝の東京FMの番組でも今週は田口ランディが出演していて、 そのアルタイのことを話していた) アルタイというのは、かつてソビエト連邦の一地方だったのだけれど、 今はモンゴルに近いところにあるアルタイ共和国、そのアルタイ。 巻上公一は「日本トゥバホーメイ協会代表」でもあるのだけれど、 その「トゥバ」というのは、「アルタイ」の右隣にあって モンゴルと国境を接した、旧ソ連の「トゥバ共和国」。 「ホーメイ」というのは、実は「ホーミー」とは少し違って、 そのトゥバ共和国で行なわれている「倍音唱法」であるトゥバの歌唱法のことらしい。 「ホーミー」というのは、同じ「倍音唱法」ではあるけれど、モンゴルの歌唱法なのだとか。 で、アルタイから呼んでくる歌手というのは、 アルタイの倍音唱法「カイ」を操ってアルタイの英雄叙事詩を歌う ボロット・バイルシェフのことだということで、 そのコンサートが6月6日、「ほぼ日」の5周年記念日に 東京の文京シビックホールで開かれる。 http://www.makigami.com/bolot/ ところで、この「声は鍛えられる」という連載のテーマは、 まさに「声は鍛えられる」ということ。 ようやくその第8回目で、トゥバホーメイから少し離れて そのインタビューの本来のテーマに関連して「いい声をつくる方法とは?」について語られている。 巻上 だから声を良くするっていうのはね、 説得力を増しますよね。 田中 ですよね。 じゃあ、いい声って、 どういう声なんですか? 巻上 いい声はね、良く使ってる声ですよ。 田中 良く使う声(笑)。 巻上 うん、良く使われてる声。 部分的にしか声を使ってないと、 説得力がないですよ。 たしかにこの言葉には納得させられてしまった。 自分でも、部分的にしか声を使っていないときの声は ほんとうに説得力がない。 やはり、自分がいかに全体として声を出すことができるか。 そのことを、ホーミーなども含めていろいろ模索してみたい。 ちなみに、このインタビュー記事のなかで<ワンポイント考察>として紹介されている 田中克彦『ことばと国家』(岩波新書)と米山文明『声の呼吸法』(平凡社)があった。 これについてもどこかで紹介してみたいと思っている。 また、巻上公一の著書(名著?)『声帯から極楽』(筑摩書房/1998.3.10発行)は、 巻上公一の「声」への取り組みについて知るのに格好のものなので、興味のある方はぜひ。 できればこれもどこかでとりあげてみたいのだけれど・・・。 「声」というのは、ぼくにとっては非常に重要なテーマなので、 少しずつでも、気のついたことなどをこれからも書いておくことにしたい。 |
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