2003

 

アン・サリー


2003.6.6

■Ann Sally / day dream
 2003.4.9 BMG Funhouse: BVCR-14008
■Ann Sally / moon dance
 2003.4.9 VideoArts Music : VACM-1223
 
そういえば。
今になって思い出せば、そういえば。
としかいいようがないのだけれど、
かなりまえにCDショップの視聴コーナーで、
しばらくその声にききほれたことがあった。
そのときはCDを買うお金とかあまりもってなかったのもあって、
それきりになってしまっていたのだった。
 
そのときのアルバムは
■Ann Sally / Voyage
 2001.10.24 VideoArts Music : VACM-1188
 
その最後におさめられていたBoth Sides, Now(Joni Mitchell)が印象に残っている。
ぼくの大好きなBoth Sides, Now。
Joni Mitchellも大好き。
しかもJoni Mitchellのような声でありながら、
それよりももっとどこかフィット感がある。
 
しかしそのときはほとんどどこかのブラジル系のシンガーかな、
というふうに勝手に思ってたのだけれど、
朝の東京FMの番組で、今週(2003.6.-)ゲストに
不思議なキャラクターのこのアン・ライスが登場していて、
日本のシンガーであることがわかる。
しかも、医学の研究者でもあり、昨年から研究のためニューオリンズ在住とのこと。
 
しかし、この伸びやかでしなやかな歌声はどうだろう。
こんなシンガーがさりげなく?存在しているという不思議。
しかもラジオでの話を聞くと、その不思議な個性は誰にも似ていないほどユニーク。
「憂歌団」とかも大好きだという(ぼくも大好き)。
なんだかわかる気もする。
 
今回のアルバムは、別のレーベルから同時2枚発売とのこと。
ムーン・ダンスとデイ・ドリーム。
なぜ別のレーベルから2枚同時発売なのかを
プロデューサーのゴンザレス鈴木がラジオで語っていたのは、
最初のアルバムはCDショップではたいていジャズのコーナーに置いてあったのだけれど、
それがとてもわかりにくかったということもあり、
いわゆるJーPOPのジャンルにも置くために
2枚のうちの1枚はJーPOP向きのレーベルにしたということらしい。
しかし、今回ぼくはジャズのコーナーを探してもJーPOPを探しても見つからず
なぜか国別の「ブラジル」のコーナーに2枚とも置いてあったのだ。
視聴のコーナーは「ソウル」系のところ。
なんだ、プロデューサーの意図がまったく反映されてないじゃないか(笑)。
 
このアルバム、たぶんぼくのスタンダードになりそうな予感がしている。
ここまでのクオリティというのはなかなかない。
それから、おもしろかったは、2枚のCDの色が赤茶系と緑系になっているのだけれど、
すぐに思い出したのが、デヴィッド・シルヴィアンの2枚組のベストアルバム。
これもぼくにとってはスタンダードなんだけれど、その符合が偶然ではない気もしたりする。
それはともかく、ぼくの好きな女性ボーカリストの筆頭に来そうな気がする。
明日の朝の東京FMの番組では生演奏があるらしいのだけれど、
今朝のゴンザレス鈴木のコメントは「ふるえがきますよ」という
めいっぱい期待感をいだかせるもの。
医学研究もありめったに日本に帰国はできそうもないけれど、
近くでライブがあればぜひ行きたいところ。
5月には大阪、名古屋、東京でライブがあったようである。
 
さて、今回のアルバムについて、ホームページに次のような解説あり。なるほど。
ぼくは日本語の曲のいくつかがとくに気に入る。
とりわけ細野晴臣の「三時の子守歌」や「蘇州夜曲」とか最高。
http://www.soulbossa.com/annsally.html
 
        彼女の新たな作品『day dream』、『moon dance』は、前作に引き続き
        カヴァーで構成されている。 いささか乱暴にイメージを分けるとすれば 
        『day dream』ははっぴぃえんどを再評価する若い世代へ向けたオルタ
        ネティヴな名曲群、 『moon dance』はノラ・ジョーンズに代表される
        新しい形のスタンダード・ヴォーカル集といったところだろうか。 合わ
        せて全 22 曲という大作ながら、制作はわずか 2 週間足らずという驚異
        的なペースで進められた。 
        それにしてもここにセレクトされた楽曲の拡がりはどうだ。 ニール・ヤ
        ングやハース・マルティネスのようなフォーキーなロック、 吉田美奈子
        “レインボー・シー・ライン”といったジャパニーズポップス・レアグ
        ルーヴ、 果ては歌謡クラシック“蘇州夜曲”、“星影の小径”までレパ
        ートリーに加えられている。 そして現役の医師でもあり、その関係上、 
        前作発表後からニューオリンズでの暮らしを続けている彼女の嗜好は、 
        アラン・トゥーサンやトラディショナルなゴスペルを選んでいるところ
        からも強く窺えるだろう (現地ではバプティスト・チャーチにおもむき、
        生の教会音楽を聴いて刺激を受けているそうだ)。 
        懐かしさだけではない。テクノや音響派もかくやと思わせる、 テクスチ
        ャーへのこだわり=原曲への冷徹な視点がごくナチュラルに織り込まれて
        いるのも、 彼女の音への鋭い嗅覚を物語っており、ミュージシャンのス
        ポンティニアスな演奏を引き出す魅力がある。 
        歌いたい曲を、シンプルにそして徹底的に歌いきること。 それが結果的
        にアン・サリーがワン・アンド・オンリーな存在であることを証明してい
        るが、 今作はまた、あらゆる国や世代を超えて、ひとがいかに生きていく
        かということへの、 さりげないメッセージでもあると思う。 それはちょう
        ど、かつてエリス・レジーナが、 ジルベルト・ジルやカエターノ・ヴェロ
        ーゾといった作家の曲を歌うことにより、 ブラジル音楽の伝統が確実に受
        け継がれていったのと同じように。 
        『day dream』、『moon dance』はアン・サリーというひとりの女性の
        在り方、音楽との距離そのものだ。 そこには音楽とそして日常を愛おしむ
        彼女のまなざしがあり、それが私たちの心を掴んで離さない。 
        駒井憲嗣
 
 


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