風のメモワール135
原丈人『新しい資本主義』
2009.4.24

今、「ほぼ日」で、
原丈人さんへのインタビューが連載されている。
http://www.1101.com/hara/fourth/index.html

原丈人さんへのインタビューはこれまでにも数回掲載されていて、
最初は2007年11月。
「原丈人さんと初対面。考古学から『21世紀の国富論』へ」。
http://www.1101.com/hara/index.html
続いて、2008年7月に
「とんでもない鉄道模型とすごいテレビ電話の話」。
http://www.1101.com/hara/first/index.html
さらに2008年9月に、
「コンピュータ以上に便利な道具と新しい株式市場をつくるという話」。
http://www.1101.com/hara/second/index.html
そして、2008年10月に、
「「XVD」と「吉本隆明」を組み合わせ、「スピルリナ計画」の難題を解決し、
「世界一の鉄道博物館」を建てるという話」。
http://www.1101.com/hara/third/index.html

今回のインタビューは、それに続く内容になっている。

ちょうど、原丈人さんの
『21世紀の国富論』(平凡社/2007.6.10.発行)に続く、
『新しい資本主義』(PHP新書/2009.5.1.発行)が出たところで
早速目を通したところなのだけれど、
原丈人さんのやっていることは
やはり多くの方にとって知っておく価値があるだろうし、
知れば知るほど、驚きとともに未来への希望が
抽象論ではなくきわめて具体的に見えてくるだろうと思う。

新しい著書の「新しい資本主義」というタイトルにもあるように、
これからの経済においおそらくはもっとも必要とされる視点の一つを
この方は提唱され、提唱するというだけではなく、具体的に取り組んでいる。
面白いのは、この方の出発点が「考古学」だということで、
貧乏な考古学者だった原さんが、そのための資金をつくるために、
スタンフォードのビジネススクールに入るところから、
現在に至っているということである。

「ほぼ日」に掲載されているプロフィールを。

   1952 年大阪生まれ。慶應義塾大学法学部卒業
   後、考古学研究を志し中央アメリカへ渡る。
   スタンフォード大学経営学大学院、
   国連フェローを経て同大学工学部大学院を修了。
   29 歳で創業した光ファイバーのディスプレイメーカーを売却後、
   主に情報通信技術分野で新技術を創出する企業の育成と経営に注力。
   90 年代にソフトウェア産業で
   マイクロソフトと覇を競ったボーランドをはじめ
   SCO、ユニファイ、ピクチャーテル、ウォロンゴング、
   トレイデックスなど十数社を成功に導き、
   シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストのひとりとなった。
   会長を務める事業持株会社デフタ・パートナーズグループは現在、
   アメリカ、イギリス、イスラエルでPUC というコンセプトのもと
   技術体系を構築。2004年には東京とソウルに拠点を設けた。
   05 年にインテルと合併したオープラス・テクノロジーをはじめ、
   ゾーラン、オーレン、XVD、フォーティネットなどの
   企業群を育て、ポスト・コンピュータ時代の新産業を先導する。
   アメリカ共和党のビジネス・アドバイザリー・カウンシル評議会
   名誉共同議長、
   国連経済社会理事会CISRI 常任監視団大使兼UNONG WAFUNIF 代表
   大使、財務省参与、税制調査会特別委員、産業構造審議会委員、
   (財)アライアンス・フォーラム代表理事、
   (財)原総合知的通信システム基金理事。
   研究開発型ベンチャー企業の育成に適した税制や株式市場のあり方、
   新技術を用いた途上国の支援など
   幅広い分野で積極的な提言と活動を行っている。
   http://www.deftapartners.com/

『新しい資本主義』の「あとがき」から、
「お金」についての、きわめてあたりまえだけれども、
それを実際の金融や経済活動のなかで具体的なあり方を
あらためて考えさせられる部分を引用しておきたい。

この原丈人さんという人のすごいのは、
きわめて率直な形で理想を語ることができるとともに、
それが具体的な行動とし両輪の輪として成立しているところだと思う。
しかも、西欧人のきわめて言語的で
理論至上主義的な部分にアンチをぶつけるのではなく、
相手の土俵の上で反論及び提言を行なう現実感覚・実践感覚で
課題にアプローチするのである。
これには、ちょっと感動してしまう。

   希望とは何だろうか。そして幸せとは何だろうか。
   いま、このことについて、どれだけ真剣に考えられているだろうか。
   本文でもふれたとおり、経済学は数字で表わせないものすべてを捨て
  去ってしまい、「幸せ」という考え方さえ、数値化し、尺度に頼るよう
  な風潮を撒き散らしてきた。そのためもあって、「お金をもっているこ
  とこそが幸せ」、あるいは「幸せになるためにはお金儲けをしなければ
  ならない」などという考え方が大いに広まってしまった。
   たしかに、お金をもっているかもっていないかの尺度で測れば、どん
  な愚か者でもくらべてみることができるだろう。だが、ほんとうにそれ
  が正しいのか。
   私はベンチャーキャピタリストとして、富豪を五〇〇人以上は生み出
  してきたが、みているとみな、その後ろくな人生を送っていない。
  (中略)
   そもそも、お金というものは、「幸せになりたい」という夢をかなえ
  るための道具にすぎない。しかも、これまで数多くのお金持ちを見てき
  た経験からすれば、必要以上のお金を手にすると、かえって真の目的は
  かなえられなくなるものである。目的は、必要な金額よりちょっと少な
  いくらいのお金をもっているときにこそかなえられるものであって、お
  金がありすぎたら、目的は絶対かなわない。そういうものなのである。
  (中略)
   いちばん重要なのは、目の前に与えられたことを一所懸命、誠心誠意
  コツコツとやっていくことなのだ。それはつまらないことかもしれない。
  嫌なことかもしれない。しかし、どのようなことであれ、自分で経験し
  たことは必ず一生のうちで無駄にはならない。その基本的な姿勢を忘れ
  てはいけないと思う。

ほんとうにあたりまえのことだけれど、
お金にかぎらず、なににつけ忘れてはいけないのは、
自分の「分」を知るり、足ることを知りながら、
理想を忘れず、不断の努力を続けるしかないということである。

そういう、いわば青くさいことを
そのまま生き方にしている原丈人さんという人の活動を
これからもずっと見ていきたいと思っている。
こういう人がいるというだけで、世界は明るく希望に満ちてくる。