風のメモワール42

心敬・唐木順三


2008.2.4

松岡正剛の誕生日は1月25日。
64歳になったということである。
その日アップされた千夜千冊は
「心敬/ささめごと・ひとりごと」(1219夜)。

心敬は、室町時代中期、応仁の乱の渦中にあり、
天台宗の僧であり、連歌師でもあるが、
1219夜を読んで以来、ぐっときて、
松岡正剛の語る心敬の「艶」、
そして「冷え寂び」に心奪われる日が続いている。

松岡正剛は30年ほど前に、
唐木順三の『無常』で心敬に出会い
衝撃を受けたという。

唐木は、心敬が『ささめごと』に、
幽玄というものは「心の艶(えん)」なることだ
と書いていたと指摘していたという。
そして、その「心の艶」から松岡正剛の冒険が始まったのだという。
そして、「冷え寂び」に到る。
これが、なかなかしびれる話なので、
(しびれない人はしびれないだろうが)
興味のある方は、千夜千冊の1219夜をご覧ください。

それはさておき、唐木順三。
この「冷え寂び」について記してあるのが
『日本人の心の歴史』(ちくま学芸文庫)で、
そういえば、ずっと前に買って読んでたはずだ、と思い出す。
奥付をみると、1993年である。
ううん、まったく覚えていない。
ぼくの「冒険」は、やっとこれからはじまるのだろうか。

ぼくにとっては(理解はまったく別として)
唐木順三という人はかなり想起しやすい人なのだが、
現在手に入る本を探してみると、これがまるでないのがわかる。
『無常』も『中世の文学』も『無用者の系譜』も『千利休』も
まったく手に入らない状態になっている。
だれも読まなくなっているのだろうか。

心敬についても、ほとんど知らないので、
調べようとしたのだが、その関連本は
図書館にでも出向かなければ手に入らない。
極めて貧しい出版事情というか、読者事情であることが
こんなことからもはっきりとわかる。
松岡正剛のような人がいるから、
こんなぼくでも、こうした機会に気づくことができるのだけれど、
松岡正剛さん、吉田秀和さんや白川静さんのように、
90歳以上まで頑張ってくださいという感じである。