風のトポスノート575

 

「その先」を見たい


2006.3.29.

 

すでにやったことではなく、「その先」を見たい。

だから、行きたいとこはあるけれど、
そこにいく手段がわからないし、経験もない。
だから、私は、効率をすっとばし、
人から見れば、ぐずぐず、
のろのろと、歩んでいるところです。

山田ズーニー 『おとなの小論文教室。 』
Lesson 293 いきたいところ
http://www.1101.com/essay/2006-03-29.html

ぐずぐず、のろのろ、している。
ほんとうにいろんなことを考えて日を送っている。
ときに迷路のようなところを彷徨ったりもして、
はなはだ効率はわるいのだけれど、
こういうぐずぐず、のろのろがないとぼくはいけない。

「すでにやったこと」が
とくにこれといってあるわけでもないのだけれど、
それでもやはり「すでにやったこと」を
もういちどくりかえそうとは思わない。
できれば、「その先」へと一歩を踏み出したい。

もちろんこれだけは変わらないだろう確かさは
ほんの少しだけれどたしかにあるだろうと思っている。
けれどそれはソリッドな感じのものではなく
動的な幾何学のようなものだから、
それをピンで留めて標本のようにして
展示したようなものをまとめてみようという気にはならない。
だから事細かく注釈のついた分厚い研究論文集のようにはなりようがない。
そんなものを編む力も気力もなくそうしたいとも思わないから、
ぼくは愛すべきものへとただ向かいたい。

ぼくは、ぐずぐず、のろのろ、愛し、
ぐずぐず、のろのろ、美しいものに溜息をもらし、
ぐずぐず、のろころ、世界のすべてに挨拶を送っていようと思う。

ぼくが愛するのも
「すでにやったこと」ではありえない。
いつも「その先」にある未知のこと。
「すでにやったから」とか「すでに知っているから」というのではなく、
ぐずぐず、のろのろ、「その先」の
まだ見えないものを見たいと思い続けている。