note19:
物質的な相における点が完全に球面のなかにあるように、
エーテル的な相における平面は完全に球面のなかにある:空間の質的反転

<ジョージ・アダムス 『エーテル空間』からの引用>

 まず最初に物質空間における球の性質を思い起こしましょう。球はひとつの中心点を
持っています。“球”を思い浮かべればすぐに私たちの空間表象は球の中心点に集中しま
す。しかし物質空間のなかにある球の中心点は、与えられた球の中心点であるという意
味において、相対的なものでしかありません。他の球はまた他の中心点を持っています。
物質空間にとって絶対的な意味を持っているのは点ではなく平面、すなわちこの空間の
“無限平面”です。近代幾何学における球の中心点は、与えられた球面と絶対平面との関
係から生じます。この中心点は、その球面に対する絶対平面の“極”なのです。球の中心
点は、たとえば次のようにして生じます。
(P.40)
 絶対平面のなかの任意の点を通って(つまり任意の無限遠点を通って)球面へ向かっ
て可能なすべての接線を引くと、それらすべての接線は球の“最大円”に接する円筒をつ
くり出します。この最大円平面は球の中心点を通ります。これと同じことをすべての無
限遠点に関して行えば、球の中心点を通るすべての平面が得られます。つまり無数の点
(いわば無数の星々)を乗せている無限遠平面から、無数の平面が構成するひとつの中
心点が生まれます。そうです。球面は空間の場所的反転だけではなく、空間の質的反転
Umstuelpungをもたらしてもいるのです。
(P.40-41)
 同じように空間のなかの平面はどれも、球との関係をとおして、その極としての特定
の点に対応しています(図10)。図に示されている点よりも中心点に近いところにある
点は、より遠い平面に対応しています。点を中心点から半径に沿って球面へと動かして
いけば、その点に対応する平面はつねに自分自身に平行に(延長された半径に垂直に)、
無限遠平面からその点へ向かって近づいていきます。中心点から半径に沿って遠ざかる
点と、天球周縁から近づいてくる平面は、それぞれ内と外から球面へ到達すると、そこ
で互いに溶け合います。ここでは点は“平面のなかの点”となり、平面は点を含む“接平
面”となります。点と接平面は有機的にひとつになります(図11)。
 球面はその半径の終点としての無数の点からだけでなく、無数の平面から形成されて
います。そしてそうであればこそ、球は彫塑的な表面を持つことになるのです。
(P.41)
 物質的な相における点が完全に球面のなかにあるように、エーテル的な相における平
面は完全に球面のなかにある。
(P.41)

<note19>
◎ここから、第3章(III.球面に関する対極性)に入る。
◎これまでの章で重要だったのは、エーテル空間の数学的理念を通じて、
新しい空間感情を持ち、空間の物質的一面性の呪縛を克服し、
エーテル的なものの体験を魂に呼び起こすことである。
◎この章から、ユークリッド空間は「物質空間」、反空間は「エーテル空間」と表現される。
◎物質空間における球はひとつの中心点を持っているが、それは相対的なものでしかなく、
絶対的意味を持っているのは「平面」、つまり「無限平面」である。
◎この「中心点」をしっかりイメージすることが重要になる。
球の中心点は、ただ球のど真ん中であるというのではなく、
与えられた球面と絶対平面との関係から生じることを理解する必要がある。
その中心点が、球面に対する絶対平面の「極」である。
◎無限遠点から球面へすべての接線を引くと、その接線は球の最大円に接する円筒を形成する。
つまり、無限遠からの接線なので、その接線は円の最大円に接することになり、
それは円錐ではなく円筒型になるということである。
そして、この最大円の平面はもちろん最大円なので、球の中心点を通ることになる。
◎このことをすべての無限遠に関して行えば、球の中心点を通るすべての平面を得ることができる。
そして、その中心点は無数の平面によって構成されているのだということを理解する必要がある。
このことが意味するのは、球面は「空間の場所的反転」であるだけではなく、
「空間の質的反転」をもたらしているということである。
この「質的反転」というところが重要である。
◎ここで注意が必要なのは、球に接している接平面は
「たったひとつの点」で接しているだけじゃないかというふうに見ると、
即物的な見方になってしまい、
ここでいう「質的反転」がイメージしがたくなってくるということである。
◎ここで、平面と球、そして接線の関係を再度イメージしてみたい。
そして平面のなかの特定の点から球へと無数の接線を延ばすとする。
無限遠ではなく特定の点なので、平面と球の距離が遠ければ遠いほど、
その接線が形成する円は中心点に近づいていき、
逆に平面と球の距離が近ければ近いほど、その接線が形成する円は中心点から球面に近づいていく。
その平面と球が近づき、ひとつの「点」で接すると、平面は点を含む「接平面」となり、
「点と接平面は有機的にひとつに」なる。
◎このことから、球面は無数の平面から形成されていることがわかる。
つまり、「物質的な相における点が完全に球面のなかにあるように、
エーテル的な相における平面は完全に球面のなかにある」のである。
ここでも物質的な「点」とエーテル的な「平面」の対極性を理解することが重要になる。
その対極性が、ここでは球面について展開されている。