シュタイナー全集

GA327

農業に関する講義


■GA327

 農業の繁栄のための精神科学的基礎−−農業講座

 Geisteswissenschaftliche Grundlagen zum Gedeihen der Landwirtschaft

 Landwirtscaftkicher Kurs

 

 1924年6月4日〜16日、ブレスラウのコーベルヴィッツ農場、

 8回の講義、挨拶、質疑応答

 付、1924年6月20日、ドルナハでの講義、

 及び講座のためのメモ付の補遺(47の紙片、複写)

 

 この「農業講座」は、1924年、人智学運動を行なってる農家のグループのために行なわれたもので、これが「バイオダイナミック農法」と呼ばれるものに発展します。講座は、単に好みに従って行なえる指導や方法についてのものではなく、むしろ農業のスピリチュアルな基礎を視野に置いた新たな方向付け及び拡大の起点を形成するものです。

シュタイナーの農業についての言及は、基本的にこの講座のみのようですし、日本でバイオダイナミック農法を実践されている方にとっては、おなじみのものだと思います。

 農業についてのシュタイナーの言及はこれだけだとしても、おそらくは特に「医学」に関連した諸講義も、これに関連した内容もあって、その両者を併せて見てみると、理解は深まるのではないかと思われます。

 参考までに、この本の「序言」の部分から、基本的な認識の部分についてと医学とも深く関連してくる部分について、少し引用させていただきます。

人智学の領域においては、最高度に精神的・霊的なものと、完全に実践的なものとの両面が、一体となって活動しうるということを、人々はここに見ることが出来るからです。実際にこの二つの面がお互いに絡み合い最高の調和に達したとき初めて、仕事が正しく行われているということができるのです。人智学的な活動においてたやすく陥る誤りは、一方では精神的・霊的なものが現実の生活の中へと入り込んでゆかず、一種の理論、ないしは信仰の形態をとって言葉に固執し、真の思索にかかわることをしないことによって引き起こされ、もう一方ではこれとは反対に、霊的なものが直接的に実践的な行動に移行することが出来るのだと言うことを、正しく認識しないことによって引き起こされるのです。

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・・・今日私達は理論と実践とを引き離してしまっています。今日の実践は精神を持たず、単なる習慣的業務と堕しております。

 しかしながら精神に由来するものは、もしそれが本当に霊的なるものから生ずる限り、非実践的ではなくなります。この時、霊的なるものは、本来的な意味において、最も実践的となるのです。

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・・・植物の成長には、天体全体を含めての宇宙総体が関与しているのです。そのことを人々は知らねばなりません。

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・・・人々は栄養というものは、人間が自分の周囲にある物質を食べることだと信じています。すなわち、人間は物質を口の中に放り込む、物質は胃の中に入り、ここで一部分が吸収貯蔵され、他の部分が出ていく、貯蔵されたものは消費され、そしてそれもまた排泄され、また補給が行われる、こういうふうに今日の人々は、栄養摂取を全く外面的な形で考えているのですが、実はそうではないのです。すなわち人間が自分の胃を通して摂取する栄養物によって、骨格と筋肉と、筋肉以外の繊維類が形成されます。つまりこれは、徹頭徹尾人間の頭部のためのものなのです。そして消化器官という廻り道を通って加工され、人間の体内に拡がっていくものはすべて、頭部及び神経感覚組織とそれに付属する器官の中に貯蔵されているすべてのものにとっての形成素材に過ぎないのです。これに対して、たとえば四肢組織ないしは新陳代謝器官のための物質、たとえば脚部や腕の管状骨を作るために必要な物質や、新陳代謝ないしは消化作用のための大腸を形成する物質は、決して口および胃を通して摂取された栄養から作り出されるものではなく、これらは呼吸及び感覚器官を通して周囲の世界全体から摂取されるのです。人間の内部においては絶えず、胃を通して摂取されたものが上昇していき頭内部で消費され、逆に頭部ないしは神経感覚組織の中で空気およびそれ以外の周囲の世界から摂取されたものは下にくだっていき、それから消化組織の諸器官と四肢とが作り出されてくるという過程が生じているのです。

 

●邦訳/「農業講座/地球、鉱物・植物・動物・人間の霊的・宇宙的関連」

    (新田義之監修・市村温司訳/人智学出版社/1987.9.30)

2000.6月に、イザラ書房から新訳としても刊行されています。

 


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