●ルドルフ・シュタイナー

 「シュタイナー教育の基本要素」を読む

  第三章/「受胎・誕生・成長」


*この章は、シュタイナーの宇宙進化論的なビジョンを前提にしているところもありますので、そこらへんについては随時「補足」としてコメントしていきます。

*この章の冒頭に、「人生をほんとうに理解しようと思うなら、人生とは単純なものだという考えを捨てねばなりません。…人間を包んでいる宇宙の調和の複雑さと多様性に注意をうながす必要があるのです。」という箇所がありますが、この章は、決して「単純」ではなくて、ちょっと複雑な宇宙過程が説明されていますので、それを理解する必要があることを聴衆に納得させるためでもあるようです。


<受胎・誕生・成長にはなにが反映されるか>

■生まれてから死ぬまでの私たちの人生全体は幻であるが、それは私たちが世界を見る方法によって大きな幻となっているのであって、世界が幻だというのではない。

■生まれてから死ぬまでの人生は、死んで再受肉するまでの人生を反映する。そのことを理解するためには、まず第一に、生まれてから死ぬまでの人生に、どれほど死から再受肉までの人生が反映しているかを主要な時点で考察することが必要で、第二に、死から再受肉までの人生が、地球生成以前の「古い土星」「古い太陽」「古い月」での経過と深く結びついていることに注意しなければならない。

死から再受肉までの人生は、『土星』『太陽』『月』におけるかつての人生から決定的な影響を受けている。『土星』『太陽』『月』における人生が死から再受肉までの人生に反映し、さらに誕生から死までの人生に反映するのである。誕生から死までの人生は、死から再受肉までの人生の鏡像であり、死から再受肉までに生起することは、古い『土星』、古い『太陽』、古い『月』で生じたことがらの影響を受けている。(P48) 

■受胎

●受胎に関して生じることは「地球生」だけに関係する。

●受胎の経過は、太陽と地球の共同作業を反映するものであって、それは死から再受肉の時期に私たちが精神の世界において生じることの「鏡像」のひとつである。女性的要素は太陽の影響を受け、男性的要素は地球の影響を受ける。

●誕生に向かうものは、まず母親のイメージを持ち、その母親がもっている自分の夫のイメージを通して父親のイメージを持つ。

■胎児期の生活(受胎から誕生まで)

●古い「月」進化で生じた経過がくり返される。

●死から再受肉までに私たちは太陽と月の影響を受けるが、受胎から誕生までのの間、わたしたちは太陽と月の経過の影響を受ける。

■幼年期(生まれてから自我意識が発展しなじめるまでの時期)

●古い「太陽」進化で生じた経過がくり返される。

●この時期は、さらに過去に遡る精神過程を反映するもので、太陽と月を除いた太陽系の諸惑星が共同する。

●誕生前に太陽と諸惑星の間で働いた力が、生まれて地上生をはじめた子どものなかに存在する。幼児期には、この力が外に現れていこうとする機会を与えなければならない。

●この現れ出るものはひとつの「鏡像」であり、その「鏡像」に現実を付与し確かさを与えなければならない。 

人間は実際、鏡像として世界に生まれます。人間は、この鏡像を確固としたもの、現実のものにしなかればなりません。それが、生まれてから死ぬまでのあいだの進化になるわけです。現れでようとするものを、わたしたちは妨げてはなりません。生まれるまえに宇宙から得た経過の鏡像が現れ出るのです。しかし、わたしたちの働きかけをとおして、鏡像として現れ出たものを現実へと固定しなければなりません。そして、鏡像を誤った現実へと固定しようとすると、つまりその鏡像を訂正しようとすると、その力の現れを妨げることになります。その像は、超地上的なものなのです。(P56) 

■少年時代・少女時代

●古い「土星」進化で生じた経過がくり返される。

●この時期も以前の経過の鏡像であり、太陽から土星(あるいは海王星)までの全惑星系が共同し、星空と惑星系全体とのあいだに生じるものが、この時期にわたしたちが活動する力である。

■教育が終了して、社会にでる時期

●古い「土星」進化の時代以前に生じた経過がくり返される。目に見える星々には相関物のない経過が反映される。教育を終えると、私たちは目に見える世界から解放される。

 

<教師のあり方について>

■「よい教育者」になろうとする人は、授業を愛し、授業内容を精神的・内的に愛情深くつくったうえで授業に望むことが大事である。それは、「どのようにすれば正しいか」という教育原則でがんじがらめになって授業に望むよりも大きな成果を生む。

■教員の採用にあたっては、知識の豊かさよりも、精神生活に適した心魂ということを判定すべきである。 

<精神科学と自由について>

■道徳的ファンタジーと自由 

精神科学が与えるものを受け取るということは、感覚世界の操り人形であることをやめて、人間になることを意味します。自由を獲得し、生涯にわたって自由のなかで活動するということを意味します。自由というのは、感覚世界に由来しない概念からのみ理解できるものです。わたしたちは感覚世界から有するものによっては、自由になることができないのです。『自由の哲学』で、倫理学の基礎を道徳的ファンタジーと呼んだとき、わたしはそのことに注目していたのです。……感覚世界からは見いだしえないものである道徳的ファンタジーという土台の上に、倫理学を見いだすのです。「道徳的ファンタジー」の章は、人間が自由に生きようとするなら、感覚世界から取り出されたイメージではなく、人間のなかに自由に現れるイメージ、人間が内に担うイメージ、目に見える星々を越えるイメージとの関連を持たねばならないということを裏付けるものです。感覚世界から取り出すことのできるイメージではなく、内的、創造的な手続きをとおしてのみ創造できるイメージです。

                              (P63〜64) 

<死後の目覚めについて>

●通常の「眠り」では私たちは意識がなくなるので眠るが、死後は、意識があまりにも強いため無意識になる。

●死後、私たちは過度の意識の中に生きるが、その過度の意識のなかで方向を定めなければならない。 

満ち満ちる宇宙思考から「それは、おまえであった」という言葉が現れてくるまでに宇宙思考の充満から自分の過去の地上生活を区別しはじめると、この意識の充満のなかで、「われらは目覚める」ということのできる瞬間を体験します。おそらくは、地上の生活で特別に意味深いものであった出来事が、死後の出来事のなかにも介入することによって、わたしたちは目覚めるのです。

それは超感覚的思考に慣れることです。物質界を基盤として構築された意識ではなく、それみずからのなかで活動する意識です。それが死後の「目覚め」です。この目覚めによって、死後に特別に発展しうる意志が正しい道を見いだします。(P66〜67)

 

●ルドルフ・シュタイナー

 「シュタイナー教育の基本要素」を読む

  第三章/補足1●


シュタイナーの宇宙進化論の概略について、特に、該当する章に関係する部分についてその概略を述べる。

一週間の曜日は、土曜日・日曜日・月曜日・火曜日・水曜日・木曜日・金曜日と名づけられているが、その名に沿って、このわれわれの地球の進化が説明されている。ちなみに、現在のこの地球の進化期は、「地球紀」もしくは「火星・水星期」である。

過去、地球は、「土星紀」「太陽紀」「月紀」という進化を辿り、これからはさらに、「木星紀」「金星紀」そして「ヴルカン星紀」という進化紀を辿ってゆくことになる。

ちなみに、「土星紀」は「熱の時代」とも呼ばれ、「太陽紀」は「空気の時代」、「月紀」は「水の時代」、「地球紀」は「土の時代」とも呼ばれる。つまり、土星紀においては「熱」、太陽紀においては「光・熱・空気」、月紀においては「音・光・熱・空気・水」、地球紀においては「生命・音・光・熱・空気・水・土」が形成されたのである。

こうした惑星進化紀に獲得された人間の意識及び形成された構成要素には次のような関係がある。

●土星紀/昏睡意識/肉体

●太陽紀/眠りの意識/エーテル体

●月紀/夢の意識/アストラル体

●地球紀/目覚めの意識/自我

●木星紀/意識化された夢の意識/霊我

●金星期/意識化された眠りの意識/生命霊

●ヴルカン紀/意識化された昏睡意識/霊人

こうした惑星紀のひとつひとつに七つの「周」あるいは七つの「生命状態」がありそのそれぞれについて七つの「球=形態状態」が存在する。つまり一惑星紀の中には、四十九の形態状態が存在することになる。七つの周=生命状態は、「第一元素界」「第二元素界」「第三元素界」「鉱物界」「植物界」「動物界」「人間界」と名づけられ、七つの球=形態状態は、「没形態的状態「形態的状態」「アストラル的状態」「物質的状態」「彫塑的状態」「知性的状態」「元素的状態」と名づけられている。

こうしたことを詳述していくと、果てしなくなりますので、とりあえずアウトラインをご紹介させていただきました。 


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