●ルドルフ・シュタイナー「薔薇十字会の神智学」(平河出版社)読書会

<VIII-1/7つの意識状態> 

さて、前回までは「カルマ」の問題を扱ってきましたが、この章からは地球の輪廻転生としての宇宙の進化と人間の進化の問題を扱うことになります。 

地球は、人間の輪廻転生のように、これまでいくつかの受肉状態にありました。そして、これからも受肉を繰り返していく存在です。その受肉の過程は、我々人間の形成にとって必要なものでした。人間の進化は地球の進化と深く関係しあっているのです。

現在、我々人間の意識は、「対象意識」「目覚めた昼の意識」、つまり、朝、目覚めてから、夜、眠るまでの意識の状態です。この意識状態はどのような条件で成立しているのでしょうか。 

感覚を外界に向け、対象を知覚することでこの意識は成立します。ですから、対象意識と呼んでいるのです。人間は周囲を見、目で空間の中にある色彩で境界をつけられた対象物を見ます。そして、耳で聞き、空間に音を発する対象物が存在することを認めます。触覚によって対象に触れ、暖かいか冷たいかを知覚し、また、匂いを嗅ぎ、味を確かめます。感覚を通して知覚したものについて人間は思考します。悟性を用いてさまざまな対象を把握するのです。感覚的知覚とその悟性による把握から、今日の人間が有する目覚めた昼の意識が成立しています。(P106)  

こう説明してみれば、きわめてあたりまえのことなのですが、こういう意識状態を人間ははじめからもっていたわけでないのはもちろんで、これまでに少しずつ発達させてきたわけです。

また、これからも、こうした意識状態のままでいるかというとそうではなく、今後、より高次の意識状態を発達させていくことになります。 

現在の我々人間の意識状態には、この「対象意識」のほかに、夢のある眠りの意識と夢のない眠りの意識がありますが、そうした意識はどちらも、明るい昼間の意識と異なっていることは確かです。

心理学などでも「夢」について言及したりはしていますが、人間の意識状態のさまざまについて、明確に描き出してくれるビジョンは非常に少ないといえます。

深層心理学では、顕在意識と潜在意識、ユングなどでは集合無意識などが説明されていますが、では、それらが人間の意識の進化プロセスとどうのように関係しているのかについては口をつぐんでいます。また、それを進めて、トランスパーソナル心理学などでは、ケンウィルバーのように、意識の地図を進化プロセスとして描き出している方もいます。これは、宇宙から切り離され、また統合していく過程を描いていたりして、非常に興味深い部分をたくさんもっていますので、このビジョンとシュタイナーの描く人間の意識進化のプロセスを比較してみるのもいいかもしれません。ただ、トランスパーソナル心理学は総合的な人間学とはいいがたくたとえば、スタニスラフ・グロフのようなホロトロピック・ブリージングのような非常に危険なワークがともなっていることなどもありますので、注意は必要かなと思います。

さて、テキストに戻りましょう。

神秘学では、人間の7つの意識状態を描き出しています。現在の人間の意識、対象意識は、その7つの意識状態のちょうど真ん中、4番目に位置しているといいます。今日の意識には3つの意識状態が先行し、今日の意識に続いて、また3つの意識状態が続くというのです。

では、なぜわれわれは意識の進化の中央にいるのでしょうか。それについて、シュタイナーは次のように説明しています。 

最初の状態、土星紀の前にも他の状態が存在するのですが、私たちの目には見えないのです。同じく、七番目のヴルカン星紀の後にも他の状態が先行するのですが、私たちの目には見えません。過去を見うる範囲と未来を見うる範囲が同じなのです。もし、私たちが地球紀より一つ前の月紀にいれば、土星紀の一つ前の状態が見え、反対に、ヴルカン星紀は見えなくなって、その一つ前の金星紀までしか見えなくなります。ちょうど、野原に立ったとき、左右同じ範囲が肉眼に映るのと同じです。(P106-107)  

我々は、過去と未来を同じだけ見渡すことが可能だといえます。その過去、人間が辿ってきた意識状態、そして、これから人間が辿っていくであろう意識状態について、次回から具体的に見ていくことにします。

 

<第8章・第1回・終了>


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