ルドルフ・シュタイナー

『神秘学概論(GA13)』ノート

16 土星紀 1 :熱状態


2002.3.4

 

 鉱物界、植物界、動物界の事物や生物は、後の進化期になってはじめ
て形成された。今日の地球に見出される物質存在の中では、人間だけが     
当時存在しており、その人間の中でも、…肉体だけが存在していた。け   
れども現在、地球には鉱物界、植物界、動物界、人間界の存在だけが見
出されるのではない。物質形態を持たぬ存在たちもまた見出せる。その
ような霊的本性たちは、土星紀にも現存していた。そして彼らが土星の
舞台で活動したからこそ、人間のその後の進化が可能となったのである。
(P161)
 
土星紀には、人間の肉体の萌芽が形成された。
そこには、まだ鉱物界、植物界、動物界は存在していなかった。
物質存在としては人間だけがそこに存在していた。
鉱物も、植物も、動物もそこにはまだ存在していなかった。
もちろん物質存在ではない高次の霊的存在は存在していて、
それが働きかけることによってはじめて人間の進化が可能になった。
(*土星紀において働く霊的諸存在については、後にとりあげることにしたい。)
 
 
エーテル体の萌芽ができたのが太陽紀、
アストラル体の萌芽ができたのが月紀、
そしてこの地球紀には自我が生まれることになったが、
人間の肉体は、土星紀に萌芽として生まれ、
その後、太陽紀、月紀、地球紀というように
進化期を経るごとに成長完成していったととらえる必要がある。
もちろん、肉体といっても、現在のようなイメージでとらえることはできない。
その肉体の萌芽は「熱状態」であったといわれる。
 
しかしその「熱状態」というのは、土星紀の中期のこと。
土星紀だけではなく、太陽紀も、月紀も、地球紀も、
惑星紀は没形態的霊的状態の時期、形態的霊的状態の時期、アストラル状態の時期、
物質状態の時期、そして再びアストラル状態の時期、形態的霊的状態の時期、
没形態的霊的状態の時期という七つの時期(周と呼ばれる)を通過するが、
その第4段階の物質状態の時期である。     
 先ずわれわれは、霊的な知覚器官を、この土星物体化の発端でも終末
でもなく、その中期に向けてみよう。そうすると、そこには主要な部分
において、もっぱら「熱」だけから成る土星の状態を観取することがで
きる。気体も液体も、まして固体も、その構成部分のどこにも見出せな
い。気体、液体、固体の状態はすべて、後の物体化の過程の中ではじめ
て現われてくる。
 (P161)       
 物質的な感覚の世界での熱は、固体、液体、気体の状態である。しか
しこの状態は、熱の外側もしくは熱の作用でしかない。外なる物体から
受け取る熱の作用をすべて排除して、もっぱら、たとえば「暖かく感じ
る」とか「冷たく感じる」とかい場合の内なる体験だけを、心の中に蘇
らせる努力をしてみる。そのような内的体験だけが、進化の右術中期の
 土星紀についての観念を与えてくれる。
 (P163)
この「熱」というのは、Waermeで、
英語のwarmthのように「暖かさ」という意味もあるが、
熱エネルギー、熱容量というような物理学で「熱」と訳される言葉でもある。
イメージするのは難しいところがあるが、
この「熱」の体験はとても土星紀を理解するためにとても重要である。
それを外からくる作用としてとらえるのではなく、
内的な魂の体験としての「熱」としてとらえる必要がある。
シュタイナーのいう「十二感覚」にも「熱感覚」があって、
嗅覚・味覚・視覚魂とともに魂的な感覚とされている。
ちなみに、触覚・生命感覚・運動感覚・平衡感覚が肉体的感覚、
自我感覚・思考感覚・言語感覚・聴覚が霊的感覚とされている。
 
肉体の萌芽として、そういう魂的な感覚でとらえられる「熱」状態があって、
それが最初にあって、その後の進化期を経て、
現在のような肉体が形成されたということをとらえておく必要がある。
そうすることで、いわゆる唯物的な肉体イメージから脱することができるだろうから。
  ここで「肉体」について語るとき、われわれは現在の人間が担ってい
る物質的な身体を思い浮かべたりしないようにしなければならない。肉
体と鉱物体とを、慎重に区別しなければならない。
 「肉体」というのは、現在は鉱物界の中に観察されるような、物質法
則に支配されている体のことである。現在の人間の肉体は、このような
物質法則に支配されているだけではない。その上になお、鉱物の素材に
も貫かれている。そのような物質的=鉱物的な体は、土星紀にはまだ問
題になりえない。そこには、物質法則に支配されている物質的な身体だ
けが存在している。しかしその物質法則は、もっぱら熱の作用として表
現されている。この物質体は精妙で希薄でエーテル的な「熱形体」なの       
である。そして土星全体はこのような諸熱形体から成り立っている。こ
れらの熱形体は現在の物質的=鉱物的な人体の最初の萌芽なのである。
(P164)
 


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