ルドルフ・シュタイナー

『神秘学概論(GA13)』ノート

20 土星紀4:土星紀の進化プロセス2


2002.3.9

 

         進化がここまで至ると、再びある本性たちの活動が可能になる。それ
        は「火の霊」、キリスト教では「大天使」と呼ばれる霊たちである。彼
        らはアストラル体をもっているが、この存在段階においては、自分で自
        分のアストラル体を働かせることはできない。土星の今述べた熱体に作
        用することができなかったら、彼らは、感情や知覚を働かせることがで
        きなかったであろう。
         彼らは、自分たちのこの作用の中に、自分たちの存在を認識できるよ
        うになる。自分に対して、「私はここにいる」とはいえないにしても、
        「私の環境が私をここに存在させている」ということはできる。彼らは
        知覚活動を行なうことはできるが、その知覚は土星紀の前述した光の作
        用の中での知覚である。
         この知覚は、ある意味では、彼らの「自我」である。この「自我」が、
        特殊な意識を彼らに与える。その意識は、「形象意識」と名づけられる。
        それは、人間の夢の意識のような在り方をしているが、その働きは、人
        間の夢よりもはるかに活発であって、意味もなく浮動する像なのではな
        く、土星の光の働きと現実的な関係をもって現われる。
        (P170-171)
 
ノートの15で「霊的諸存在のヒエラルキー」を整理しておいなかで
これまでふれてきたもっとも高次な霊存在は意志霊だったが、
それよりも高次だといえる
第一ヒエラルキーの愛の霊(セラフィム)と調和の霊(ケルビム)は、
土星紀において働いていないのだろうか…、
と土星紀のプロセスを負っていくと、
実は、愛の霊は、火の霊(大天使/アルヒアンゲロイ)を、
調和の霊は、生命の子ら(天使/アンゲロイ)を
サポートしているというのがわかる
 
ここでも少し注目してみたいのが、
霊存在たちの構成要素についてである。
意志の霊、叡智の霊はその最も低次のものとしてエーテル体を持ち、
動きの霊、形態の霊、人格の霊は同様にアストラル体を持っていた。
火の霊に関しては、この『神秘学概論』のなかでは、
アストラル体をもっているということは書かれているが、
エーテル体に関しては明確にされていない。
「火の霊たちと土星の熱形体とのこの相互作用の中で…
人間が現在、物質体を知覚するときの知覚器官が、
その最初の精妙なエーテル的萌芽状態の中で輝き出る」とだけ書かれている。
そのことから推察すると、火の霊には萌芽状態のエーテル体が
あったのではないかと思われる。
また、生命の子らの最も低次のものはエーテル体である。
そして、人間だけが、この土星紀において、
肉体の萌芽を有することになったわけである。
 
さて、火の霊(大天使/アルヒアンゲロイ)は、
現在人間が物質体を知覚するときの感覚器官を
最初の精妙なエーテル的な萌芽状態のなかで輝き出させる。
この火の霊は、現在の動物が有しているような
「夢の意識」としての「形象意識」を有していた。
この「形象意識」というのは、ある意味で「自我」の萌芽ともいえる。
この火の霊は、次の太陽紀において、人間の段階を達成することになる。
 
ちなみに、意識の働きということでみるならば、
人間は土星紀においては、鉱物が有しているようないわば「昏睡意識」、
太陽紀においては、植物が有しているような夢のない眠りの意識、睡眠意識、
月紀においては、動物が有しているような夢の意識、
そして地球紀においては目覚めの意識、対象意識を
発達させてきたということがいえる。
 
さて、火の霊と土星の熱形体の相互作用のなかで、
人間の感覚器官の萌芽が生じることになるのだが、
そこに、「愛の霊」(セラフィム)が関わってくる。
 
         火の霊たちと土星の熱形体とのこの相互作用の中で、人間の感覚器官
        の萌芽が進化に組み込まれる。人間が現在、物質体を知覚するときの知
        覚器官が、その最初の精妙なエーテル的萌芽状態の中で輝き出る。感覚
        器官の光の原像として現われる人間幻像(ファントム)が、見霊的に知
        覚できるようになる。
         この感覚諸器官は、火の霊の活動の成果であるが、この感覚諸器官の
        成立に参加したのは、この霊たちだけではない。火の霊たちと同時に、
        土星紀の舞台に、別の存在たちも登場する。それは土星紀における宇宙
        の進化を観察するために、前述した感覚萌芽を使用できるほどにまで進
        化を遂げた存在たちである。彼らは「愛の霊」、キリスト教では「セラ
        フィム」と呼ばれる。…
         彼らは、土星の進化を観察し、これを形象に変えて、火の霊に伝える
        ことのできるほどの高次の意識を所有していた。彼ら自身は土星の進化
        を観察することによって得られる特権をすべて放棄し、すべての享受、
        すべての喜びを放棄し、火の霊がそれを持つことができるようにする。
        (P171-172)
 
これに続いて、生命の子ら(天使/アンゲロイ)は、
「味覚と音響のドラマ」がはじまる。
この、甘い、苦い、すっぱい、というような「味覚」というのが
とてもおもしろいところである。
そして、それがさらに「音響」となる、というところ。
 
この、生命の子らは、現在の植物が有しているような
「夢のない眠りの意識」を有していて、
月紀において人間の進化段階に達することになる。
 
また、この生命の子らは、人間に一種の「悟性」の萌芽を生じさせるが、
それを通じて「調和の霊(ケルビーム)」がそこに働いている。
 
         土星存在の新時代が、この出来事のあとに来る。光だけの舞台に別の
        ものが登場してくる。しかし超感覚的認識に映じるその情景は、多くの
        人には、まるで狂っているとしか思えないであろう。まるで土星の内部
        が、さまざまの味覚内容の合流し、波立つ流れのようになる。土星の内
        部のさまざまな地点が、甘く、苦く、すっぱく感じられる。そしてその
        味覚作用が外なる天空の彼方へ向けられると、それらすべてが音響とな
        り、一種の音楽となって知覚される。
         この状況下で、再び特定の存在たちが、土星上での活動を開始する。
        それは「薄明の子ら」、もしくは「生命の子ら」、キリスト教の「天使」
        と呼ばれる存在たちである。彼らは土星内部で波立つ、味覚の働きと作
        用し合い、それによって彼らのエーテル体は、一種の新陳代謝と呼べる
        ような活動を行なう。彼らは生命を土星内部にもたらす。そうすると、
        土星内に養分を摂取し、排泄する経過が生じる。彼らはこの経過を直接
        生じさせているのではない。彼らの生じさせているものを通して、間接
        的にこの経過が生じるのである。
         この内部生活は、「調和霊」、キリスト教では「ケルビーム」と呼ば
        れる別の存在たちが、この宇宙体に入ってくることを可能にする。この
        存在たちのお陰で、「生命の子ら」は、暗い意識が持てるようになる。
        それは、現在の人間の夢意識よりも、さらに暗い意識、人間が夢のない
        眠りに入ったときのような意識である。
        (…)
         この「夢のない眠りの意識」を、現在の植物もまた所有している。植
        物の意識は、たとえ外界を人間のようには知覚できないにしても、生命
        活動を制御し、生命の働きを宇宙の働きと調和させることができる。…
        今問題にしている土星紀において、「生命の子ら」は、この制御作用を
        自分では知覚できないが、しかし「調和霊」はそれを知覚している。し
        たがって調和霊こそがこの生命活動の本来の制御者なのである。
         この生命活動のすべては、すでに述べた人間幻像の中に映し出されて
        いる。したがって、人間幻像を霊視すると、それがまるで生きているよ
        うに現われる。しかしその生命は、仮象の生命にすぎない。この人間幻
        像を使用して、十分に生きようとするのが「生命の子ら」の生活なので
        ある。
        (P172-173)
 
 


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