ルドルフ・シュタイナー

『神秘学概論(GA13)』ノート

25 太陽紀2:停滞するものたち


2002.3.21

 

        時代が経過する間に、すべての存在が進化を遂げるのではない。目標に
        達することなく、停滞するものたちがいる。したがって、土星進化の過
        程でも、すべての人格霊が、すでに伸べたような人類段階に達したので
        はないし、同様に土星紀に形成された人間の肉体のすべてが、太陽紀に
        固有の生命体を担えるまでに成熟を遂げたのでもない。したがって太陽
        紀の状況に適応しないものたちが太陽紀に現れ、土星紀に達成できなか
        った事柄を、今、太陽の進化段階で、もう一度やり直さなければならな
        い。…
        このようにして、土星紀の熱存在のままであり続けたものは、太陽紀に
        おいて二つの部分に区分され、その一方は、人体にいわば呑み込まれる。
        そしてそれ以降、人間存在の内部にあって、人間の低次の本性となる。
         (P185-186)
 
この「停滞するものたち」のことは
「宇宙の生成にとって最大の意味をもつ、ひとつの事実」だ
という言い方をしている。
 
なぜ、「最大の意味をもつ」といったのだろうか。
そのことを考えてみると、
たとえば、現在この地球紀において、人間は、
肉体、エーテル体、アストラル体、自我を有しているのだけれど、
もし「停滞するものたち」がいないとすれば、
人間はある意味、そういう構成体を有することができなかった、
ともいえるからである。
 
太陽紀において、人間は土星紀と太陽紀を経た肉体と
太陽紀において得たエーテル体を有しているといえるのだけれど、
もし「停滞するものたち」が存在しないとすれば、
肉体を有することができなかったともいえるからである。
人間は進化を通じて「高次」のものを形成するとともに、
「低次の本性」を有していく必要があるわけである。
 
もちろん、「停滞するものたち」の意味はそれだけではなく、
「停滞するものたち」が新たな「領界」を作り出すということでもある。
 
         土星紀の熱存在のもう一方の部分は、太陽紀の人間存在と人間存在の
        間で、またはそれらのかたわらにあって、独立した存在となり、人間界
        と並ぶ第二の領界を作り出す。それは、太陽紀に、まったく独立した、
        物質体だけの熱形体を形成する。したがって、完全に進化した「人格霊」
        は、独立した生命体に、前述した仕方で働きかけることができなくなっ
        てしまう。
         ところが、ある種の「人格霊」もまた、土星紀の段階に残留していた。
        この人格霊たちは、土星紀においては、人類の段階に到達しなかった。
        彼らと、独立するに至ったこの第二の太陽領界との間に、ある種の親和
        関係が生じる。彼らは今、太陽紀に、ちょうど彼らの先へ進んだ仲間た
        ちが、すでに土星紀に、人間存在になったのと同じような仕方で、この
        残留した領界に向き合わなければならない。彼らの進歩している仲間た
        ちは、土星紀に先ず肉体を形成したのだったが、しかし太陽紀における
        この残留した人格霊たちには、このような仕事をする可能性はまったく
        ない。それゆえ彼らは、太陽体から離れて、太陽体の外に。別の独立し
        た宇宙を形成するようになる。太陽から別の天体が生じる。
         この別の天体から、残留した「人格霊」たちは、第二の太陽領界の前
        述した存在たちに働きかける。このようにして、以前土星であったもの
        から、二つの星体が生じた。太陽は、その周囲に、もうひとつの宇宙体
        をもつようになる。この宇宙体は、一種の土星の再生であり、新しい土
        星なのである。
        (P187-188)
 
進化は、人間に限らず、高次の霊的存在にとっても一様ではない。
陳腐な例ではあるが、最初はみんないっしょに小学校に入学したとしても、
みんながそのまま進級できるわけではない。
落第して1年をもう一度やり直す存在もいる。
また、進学のときにも同じように進学するのでもない。
そのプロセスにおいて、さまざまな進化段階や
進化の経過を経てきた存在たちが複雑な様相を呈することになる。
このことを理解しておかないと、宇宙進化の重要な部分が理解できなくなる、
ということがいえるのではないかと思う。
そういう意味でも、「宇宙の生成にとって最大の意味をもつ」わけである。
 
またこの点において、次のことも忘れてはならない点である。
 
         しかしすべての人間鉱物がこのようにして生命化されたわけではない。
        それは起こりえなかった。というのも植物人間は、その生存の基盤とし
        て鉱物を必要としたからである。太陽上の植物人間の場合も、今日植物
        がその諸実質を取り入れる鉱物界なしでは存在しえないのと同様である。
        より以上の進化のために、植物人間は人間の原基の一部を鉱物の段階に
        置き去りにせなばならなかった。太陽における諸条件は土星のそれとは
        大きく異なっていたので、突き落とされたこれらの鉱物は、土星上で採
        ってきたものとは著しく異なる諸形態を取った。こうして人間植物界と
        平行して、第二の領域、特殊な鉱物界が出現したのである。人間は、仲
        間の一部をより低い領域へと突き落とすことによって、より高い領域へ
        と昇る、ということが理解できよう。我々は、続く諸々の進化段階にお
        いて、この過程が幾度も繰り返されるのを見ることになろう。これは、
        ある基本的な進化法則に合致する。
        (「アーカーシャ年代記より」人智学出版社版/P158)
 
進化するということは、
「仲間の一部をより低い領域へと突き落とすこと」でもあるということ。
わかりやすいので、ここでも陳腐な例をだすが、
ある学校にの入学試験を受けるとする。
そしてだれかが合格するということは、
そのことそのものがだれかを不合格にするということにもなる。
 
そのことを忘れて、この世界を正しく理解することはできない。
自分が進化しえているということは、
「仲間の一部をより低い領域へと突き落と」しているという「事実」である。
しかし、だからといって、進化しようとしないでいることはできない。
 
 


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