ルドルフ・シュタイナー

『神秘学概論(GA13)』ノート

30 月紀5 諸天体とその相互作用


2002.11.7

 

         太陽と月とが、それぞれふさわしい居住地となるために、二つに切り離
        された。霊の働きによる素材と力のこの方向づけは、さらに続く。霊的存
        在自身が諸天体の運動、相互の円運動を定める。これらの天体は、それに
        よって相互に変化した位置を占めるようになる。そしてひとつの宇宙体が
        他の宇宙体に対してその位置を変化させると、それらに対応する霊的存在
        たちの作用にも変化が生じる。太陽と月との間にもこのことがあてはまる。
        月が太陽の周囲を公転するようになると、人間存在もまた、ある時は太陽
        の作用圏内により近づき、別の時にはそこから離れて、むしろ自分自身に
        頼ろうとする。この運動は、特定の月存在の前述した「離反」と、それが
        原因で生じた争いの調停との結果である。それは、離反が招いた霊的な力
        関係の物質的な表現であるにすぎない。
         ひとつの天体が別の天体の周囲を運行することは、天体を居住地とする
        存在たちの中に、前述したような意識の変化を生じさせた。月は、その生
        命活動をある時には太陽の方へ向け、別の時には太陽から引き離す。太陽
        の時期と遊星の時期とが交互に存在するようになる。遊星の時期には、月
        の存在は、太陽に背を向けた月面上で、成長を遂げる。もちろん、月の上
        では、諸天体の運行になお別の事柄が付け加わる。すなわち、超感覚的な
        眼でこの時代を回顧すると、まったく周期的な仕方で、月の存在たちが自
        分で月面上を移動しているのを知ることができる。彼らはある時期には太
        陽の影響にさらされる地点を求めて移動し、別の時期にはこのような影響
        を受けることなく、いわば自分に立ちかえれる場所へ移っていく。
        (P209-210)
 
シュタイナーの示唆する宇宙進化のプロセスについて
いろいろ考えてみるようになって以来、
太陽や月、そしてその他の惑星等の存在は
いったいどういう存在なのだろうということが
ことあるごとに気になっていた。
 
少なくとも、太陽系の諸惑星にしても、通常とらえられているように、
ガス体であるとかプラズマ状であるとか、
地球のような大地をもった状態であるとかいうような、そうした在り方では
とらえられないだろうということだけはわかるのだけれど、
ではどういう存在なのかというと、やはりよくわからない。
 
そこで、何度目かに『神秘学概論』を読み返しているときに、
たとえば上記のところなどにヒントがあることに気づいたので、
そことのところをこの項ではメモしておいて、
今後の材料としておきたいと思う。
 
ちなみに、各惑星についていえば、
たとえば『神智学の門前にて』(イザラ書房)において、
簡単に次のように述べられていることについても考慮する必要がある。
 
        「土星」、「太陽」、「月」という名は、今日存在する惑星を指している
        のではない。「太陽」は今日の太陽ではない。今日の太陽は恒星である。
        太古の「太陽」は惑星だった。受肉の経過のなかで、「太陽」は惑星から
        恒星の等級に上昇したのである。太古の「月」と名づけられているものも、
        今日の月ではない。「月」は地球の第三の受肉段階である。「土星」は地
        球の最初の受肉段階である。
        (P110-111)
 
この「地球」は、宇宙進化のプロセスにあって、
「土星」、「太陽」、「月」というふうに受肉段階を経てきた。
つまり、「地球」は次々と転生している存在であるということを
前提にして考えていかなければならない。
このことはすでに「14 進化期の名称」でふれているので、
そちらのほうを参照していただくことにするが、
そのときにも引用したように、
「超感覚的に直観された土星、太陽その他の霊的状態と、
同じ名を持つ物質上の天体との対応関係」を
「外的な仕方で自然を観察する」だけではわからない、
ということだけはいえるだろう。
 
さて、ここが重要なところなのだけれど、
天体の円運動及び天体相互の位置関係の変化について、
それはいったいどういうことなのか、
またそれはなぜそうした在り方がでてくるのか。
そのことを考えてみる必要があるが、
「地球紀」のところでも次のように述べられているように、
「天体相互の運動が、そこに居住する霊的存在たちの相互作用の結果」である、
というふうにとらえる必要があることがわかる。
 
        当時は、天体相互の関係がまったく別な在り方をしていた。けれども天体
        相互の運動が、そこに居住する霊的存在たちの相互作用の結果なのだ、と
        考えることは、この場合にも必要なことであろう。諸天体は、霊的、魂的
        な原因によって特定の位置を占め、特定の運動をするようになったのであ
        り、物質界の中で霊的な働きがそれを可能にしたのである。
        (P234)
 
これはまったく別のレベルの話になるが、
ある意味では、個々の人間とその相互の関係についても
そのアナロジーでとらえてみると面白いかもしれない。
 
そして、それが非常に複雑なありかたを示しているように、
天体相互の関係にしても、それにもまして複雑なのだろうという気がしている。
シュタイナーはその重要なところだけを抽出し簡略化して
『神秘学概論』で述べているのだろうから、
そこのところを考慮しながら読み進めていく必要がありそうである。
 
 


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