ルドルフ・シュタイナー

『神秘学概論(GA13)』ノート

34 地球紀4 分離した人間の合一


2003.5.11

 

        地球進化は、二つの分離した人間の根源を合一させるという目的を持つのである。
        (…)
        物質身体、エーテル体、及びアストラル体から成る低次の人間と、霊人(アート
        マン)、生命霊(ブッディ)、及び霊我(マナス)より成る高次の人間である。
 
        地球上に生存する現在、人間は物質身体、エーテル体あるいは生命体、アストラ
        ル体、そして「自我」から成っている。人間のこの四重の本性は、本来、より高
        度な進化への萌芽を備えている。「自我」は自ら率先して「より低次の」諸体を
        変化させ、そうすることによってそれらの中に人間の本性のより高次な諸部分を
        組み入れるのである。「自我」によるアストラル体の浄化と純化は「霊我」(マ
        ナス)の発達を引き起こし、エーテル体あるいは生命体の変容は「生命霊」(ブ
        ッディ)を生み出し、そして物質身体の変容は真の「霊人」(アートマン)を創
        り出す。アストラル体の変容は、地球の進化の現時点において進行の最中にある
        が、エーテル体と物質身体の意識的変容は後の時代に属する。…
         この人間の三重の変容は意識的なものであるが、地球の先立つ進化の間は、幾
        分無意識的な変容がそれに先行していた。アストラル体、エーテル体、そして物
        質身体のこの無意識的な変容の中にこそ、感覚魂、悟性魂、そして意識魂の起源
        を求めねばならない。
        (シュタイナー『アーカーシャ年代記より』人智学出版社/P182・195-196)
 
なぜ「低次の人間」と「高次の人間」というように
「二つの分離した人間の根源」があるのだろうか。
ただ「高次の人間」となるのが目的であるならば、
わざわざ「低次の人間」として地上に生まれてくる必要はないはずである。
それがわざわざ「低次の人間」の構成要素と「高次の人間」の構成要素の萌芽を
ひとつひとつ加えながら、人間は土星紀、太陽紀、月紀、地球紀というプロセスを経てきた。
 
そのプロセスが不可欠であるとするならば、
そして「自我」の働き、つまり、自我がアストラル体に働きかけて霊我へと変容させ、
自我がエーテル体に働きかけて生命霊へと変容させ、
自我が肉体に働きかけて霊人へと変容させるという働きを考えるならば、
その「低次の人間」と「高次の人間」という分離と変容、合一という
プロセスそのものに秘密が隠されている。
むしろそのプロセスそのものに重要な意味があると考えることができる。
 
つまり、「低次の人間」としてこの地上に生きているということによって
はじめて「高次の人間」の可能性も同時に存在する。
そういう意味でも、「低次」と「高次」というのは
人間進化における二つの重要な「極」であって、
その二つの「極」としての「分離」とその「合一」というプロセスそのものが
人間存在そのものであるということができるのではないだろうか。
従って、ただ低次から高次へ、という方向性だけしか見えないと、
たとえば、仏教における「解脱」というふうな、
ともすれば「現世忌避」及び超越志向のようなあり方がでてきてしまうことになる。
 
シュタイナーの教育に関する最も基礎となる講義、
『教育の基礎としての一般人間学』の最初の講義においても、
人間は「二つの部分から構成された存在」であって、
生まれてくるときに「霊的三統一体」(霊人・生命霊・霊我)が
「体的統一体」(アストラル体・エーテル体・肉体)と結びつくということ、
そしてその結びつきをいかにサポートしていくかが
教育の重要な目的であることが示唆されている。
 
         人間が二つの部分から構成された存在であることを意識しなけばなりません。
        人間がこの地上の世界に足を踏み入れる以前、霊と魂とは一つに結びついており
        ました。霊の物質界における働きは今日まだまったく隠されていますが、霊とは
        霊学で霊人、生命霊、霊我と言われている部分です。人間のこの三つの本質部分
        は、超感覚的世界、つまり私たちが今それに橋を架けようとしている超越界の中
        に存在している人間部分です。そして死後から新たに生まれ変わるまでの間、す
        でに私たち人間はこの霊人・生命霊・霊我と一定の関係に立っていたのです。そ
        してこの霊的三統一体から流れてくる力が、人間の魂的存在に浸透していたので
        す。つまり意識魂、悟性魂(あるいは心情魂)ならびに感覚魂がこの力の働きを
        受けていたのです。
         そして死後から新しく誕生するまでの期間を通り過ぎ、再び物質世界に生き始
        めると、今述べた霊的存在は魂的存在としっかり結びつくようになります。人間
        はいわば霊的魂、あるいは魂的霊として、高次の領域から地上の領域へ降りてく
        るのです。そして地上存在の衣裳をまといます。霊魂と結びつくこの地上の存在
        部分は、肉体の遺伝的経過を通して生じます。そのようにして霊的魂、あるいは
        魂的霊には身体部分が結びつきます。つまり第三の体的統一体が結びつくのです。
        霊魂の場合、霊人・生命霊・霊我という霊的三統一体と、意識魂・悟性魂(ある
        いは心情魂)・感覚魂という魂的三統一体とが結びついていましたが、その霊魂
        が物質界の中に降りてくる場合には、感覚魂(あるいはアストラル体)とエーテ
        ル体と肉体という第三の霊的三統一体に結びつくのです。けれども、これらのア
        ストラル体・エーテル体・肉体はまず母親の胎内で、次いで物質界の中で、地上
        の三統一体、すなわち鉱物界と植物界と動物界とも結びついています。ですから、
        ここでも三統一体が互いに結びついているのです。
        (シュタイナー『教育の基礎としての一般人間学』筑摩書房/P10-11)
 
ここでもうひとつ重要なのは、
霊・魂・体という三統一体、
霊においては、霊人・生命霊・霊我、
魂においては、意識魂・悟性魂(あるいは心情魂)・感覚魂、
体においては肉体・エーテル体・アストラル体というふうに
三つ組みとして進化プロセスが生じていることである。
 
人間の身体も、精神活動にかかわる頭部系(神経・感覚組織)、
物質活動にかかわる肢体系(代謝・運動組織)、
両者を相互に調和的に結び付ける胸部系(呼吸・循環組織)、の三つに三分節化され、
それぞれの組織に、思考、意志、感情という三つの魂の力を実現するという目標があるとされ、
またこれと同じように、「社会有機体」においても、、
精神活動にかかわる精神生活、物質活動にかかわる経済生活、
両者を相互に調和的に結び付ける国家=法生活という三分節化された働きがあって、
この3つの生活形式には、自由、友愛、平等という三つの目標が与えられているとされている。 
ここでも、「合一」のプロセスの重要な様態として「三統一体」が現われてくる。
シュタイナー自身の直接的な示唆は知らないが、
ちょうど、「四次元」の質疑応答のなかに、「空間は三位一体が創造した」とあるように、
これを「三位一体」との関係性において見てみることもできるのではないだろうか。
 
 


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