ルドルフ・シュタイナー

『神秘学概論(GA13)』ノート

36 地球紀6 神託


2003.5.13

 

ソクラテスは哲学者の祖のようにいわれているが、
プラトンの「ソクラテスの弁明」においても、
「神託」や夢の知らせなどによってさまざまなことが伝えられ、
また「ダイモン」の声に従っていたことが述べられている。
この点にはやはり注目しておく必要がある。
現在みなされているような「哲学」との違いはやはりおさえておかなければならない。
 
神秘学概論には、「神託」について、
ブルカン星、水星、金星、土星、木星、火星、そして
太陽(キリスト)の神託があったことについて次のように述べられている。
 
         アトランティス地域での進化は、土星人、太陽人、木星人並びに火星人への分化を
        意味していた。
        (P268)
         以前、「キリスト」の啓示を認識するためには、前述した意味で、太陽人にならな
        ければならなかった。そのような人たちは、太陽神託、またはキリスト神託と呼ばれ
        る、特別の聖域での認識を得るための儀式やその秘密知識を大切に護っていた。神託
        とは霊的な存在の意図を聞き取る場所という意味である。
         …
         別の神託が、土星人、火星人および木星人によって産み出された。それらの神託の
        秘儀参入者たちは、「高次の自我」となって生命体の内部に現われる本性たちを霊視
        し、そのようにして、土星叡智、木星叡智、火星叡智の信奉者たちが生じた。
         これらの秘儀参入者の方法以外にも、ルツィフェル的な存在たちからあまりのも多
        くの影響を受けた人たちのための方法も存在していた。その人たちは、生命体の大部
        分を、ちょうど太陽人と同じくらい、肉体から分離させたが、そのアストラル体は、
        太陽人の場合以上に、肉体の中の生命体に拘束されていた。彼らは、今述べた状態に
        よって、予言的にキリストを啓示するまでにはいたらなかった。
         …
         太陽の分離に際して地球を去った存在たちのある部分は、太陽の進化を共にし続け
        ることができなくなり、太陽と地球が分離したあとに、太陽から別の居住性、つまり
        金星を分離させた。この存在たちの指導霊は、前述した秘儀参入者やその信奉者たち
        の「高次の自我」となった。水星の指導霊は、別の人たちの「高次の自我」となった。
        こうして金星神託と水星神託が生じた。
         ルツィフェルの影響を最も多く受けた人たちにとっての「高次の自我」は、もっと
        も早くから太陽の進化を共にできなくなってしまった存在である。この存在は、特別
        の居住性を宇宙空間の中に持つことはせず、太陽から離れたのち、再び地球と結びつ
        いて、地球の周辺で生き続けた。この存在が高次の自我となって啓示を与えたのは、
        ブルカン星神託の信奉者と呼ばれる人たちである。この人たちの眼は他の秘儀参入者
        たちの場合よりも、地上の現象に向けられていた。彼らは、のちに人類の科学や芸術
        となったものの最初の基礎づけを行なった。これに反して、水星秘儀に参入した人た
        ちは、より超感覚的な事物から知識を獲得した。同じことを、より高次な段階におい
        て、金星秘儀の参入者たちも行なった。ブルカン星、水星、金星の秘儀参入者と、土
        星、木星、火星の秘儀参入者との相違は、後者の場合、その秘密をむしろ上からの啓
        示として、あるいは完成された状態において、受け取ったのに対して、前者は、すで
        に自分自身の思考形式で秘密知識を受け取っていたことにある。
         この両者の中央には、キリスト秘儀の参入者たちが立っていた。彼らは、直接、啓
        示を得たが、それ以外にも人間の概念形式でその啓示の秘密をまとわせる能力をもっ
        ていた。土星、木星、火星の秘儀参入者たちは。むしろ比喩の中で語らねばならなか
        った。キリスト、金星、水星及びヴルカン星の秘儀参入者たちは、むしろ観念で伝達
        を行なうことができた。
        (P270-273)
 
ブルカン星、水星、金星の神託における秘儀参入者が、
「自分自身の思考形式で秘密知識」受け取ったのに対して、
土星、木星、火星の神託における秘儀参入者は、
「上からの啓示として、あるいは完成された状態において」受け取っていた、
というその両者の違いをふまえることで、
キリスト神託における秘儀参入者がその両者のあり方を
「中」するものであるということが理解できるようになる。
そしてそれを踏まえながら、やがて「キリスト事件」が起こることになる。
かつては「神託」として告げられて秘儀が、人類全体の前に公開されたのである。
 
ところで、「神託」というと日本では神道が思い出される。
かつては神主や巫女が神の言葉を聞き、その正邪を審神者が見極め、
それを人々に伝えていたという。
その神託の場所が神社というわけである。
もちろんそれだけが神社の起源ではないのだろうが、
面白いことに神社で歴史上の人物が死後祀られ○○神社と名づけられるが、
ローマなどでも建国の祖とされるロムルスをはじめ、
ユリウス・カエサルやアウグストゥスなど死後に「神君」となり、
その神殿が建てられたりもしていたということである。
もっとも日本の神社では、祟りを恐れた祀り方もされるのだけれど…。
 
日本の神社にはさまざまな系統があるが、
ひょっとしたら祀っている神々やその神社の系統や鳥居の形などは、
かつてあったさまざまな神託のあり方と関係しているのかもしれない。
 
 


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