『自己教育』ノート11

光と闇


(2003.4.22)

 

         子どもたちはゲーテの自然科学にもとづいて、二つの現象に気づきました。つま
        り、光源を白っぽいもので隠すと、光は黄色、オレンジ色、赤に見えるという現象
        と、黒い背景に光を当てて真ん中を濁らせると、青系統の色が生まれるという現象
        です。それによって、よく似た現象を知ることができ、理解する能力を身につける
        ことができます。…本来、真っ黒い闇である宇宙が、私たち人間の目には青く見え
        ます。それは、深海や深い湖の場合でも同じことです。生徒は物理の授業を通して、
        光と闇から色が生まれることを体験します。…
         この光と影のター間は、毎週のスケッチの授業でも扱われます(水彩の授業は二
        年間中断します)。スケッチの授業では、闇と光、黒と白の関係を、明暗線描、白
        黒線描として、芸術的に紙の上に表現する取り組みをします。その時間に、子ども
        たちといっしょに体験したのは、強い光は深く黒い影をもたらすということです。
        そして、絵を描いていくうちに、コントラストを強めるために真っ白い白を描くた
        めには、まわりを黒くすればするほど白が浮き上がってくることに気づきます。こ
        のように、生徒はまったく新しいやり方で、光と闇についての関係を深めていくの
        です。
         (ヘルムート・エラー『人間を育てる』P190-191)
 
空の青、海の青は、謎のように深く美しい。
その美しさは闇ゆえのものなのだ。
そのことに気づいたときの驚きも忘れがたい。
 
光の三原色を合わせると白になり、
色の三原色を合わせると黒になる。
その白と黒の謎もまた私たちを深みへと導く。
 
おもしろいことに、シュタイナー学校では、
6年生、7年生の二年間水彩の授業が中断されるとある。
おそらく人はその成長の途次において、
光と闇の秘儀でみずからを満たす必要があるのかもしれない。
 
「真っ白い白を描くためには、
まわりを黒くすればするほど白が浮き上がってくる」
白を浮き上がらせるための黒。
光を際だたせるための闇。
 
自己教育においても、
みずからの内にある闇について見出していく必要があるのだろう。
そうしなければ、「自由」を育てていくことができないことになるのだから。
シェリングが『人間的自由の本質』において、
「悪」を追求しているのもそのことによる。
シェリングが自然哲学を構想しようとしたのも、
そのことと深く関連しているのかもしれない。
 
今日みたあの深い青空の向こうには
あの深い深い闇があるように、
私の心の色が今青で満たされているとしても、
その底には深い深い闇があるのを忘れてはならないだろう。
 
 


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