ルドルフ・シュタイナー

内的霊的衝動の写しとしての美術史

 GA292

yucca訳


第7講-2

数世紀にわたって見られるクリスマスのモティーフ:
キリスト・イエスの誕生ー羊飼いたちの礼拝ー王たちの礼拝ーエジプトへの逃避

モザイク、ミニアチュール(細密画)
イタリア、ネーデルラント、ドイツのマイスターたち

1917/1/2   ドルナハ


 さて、以上のような註釈を述べましたが、これからまず、キリストの誕生と羊飼いたちの礼拝、そして王たちの礼拝に関連するものを見ていきましょう。


679   モザイク  キリストの誕生 パレルモ、キエサ・デラ・マルトラーナ 12世紀

 このかなり古い表現のなかに、みなさんは、まさにすべてが典型的に捉えられ、そして実際のところ、東方からのその大部分は古代において神話のためにあった典型的な表現に遡るものをごらんになるでしょう。と申しますのも、まったく自然に即したしかたで、神話表現の典型的なものが、キリスト教的なものの表現のなかへと成長しているからです。ちょうど、オルフェウスのタイプ、つまりかなり古い神話表現、文化表現に遡る良き羊飼いのタイプが、新たな出来事を表現するのに使われているように、別の古い構成モティーフとでも申し上げたいものが、新たなキリスト事件のなかにそのまま持ち込まれているのです。

 次の絵は、いわゆる貧者のための聖書のなかに見られるものです。


680   木版画   キリストの誕生  15世紀末

 もっと前の世紀のこのような聖書は、通常、旧約聖書と新約聖書をパラレルに描いています。注目されていたのは、新約聖書は旧約聖書の成就である、ということで、これがこれらの貧者のための聖書にはさまざまに含まれています。ここでももっぱら私たちの興味を引くのは、中央のキリスト・イエスの誕生です。


681 247  細密画  キリストの誕生  11世紀

 とても興味深いのは、宇宙のなかでキリストに結びつけられたものがこうして取り巻いているようすです、霊的な関連についての意識がここではまだ明瞭に現れています。

 次は、《ホルトゥス・デリカールム(喜びの園)》[Hortus delicialum]のなかのモティーフです。


682   ヘラート・フォン・ランズベルク  キリストの誕生  12世紀末
            その下:エジプトへの逃避

 これはもう一方の絵とつながっているものですので、一緒にお見せします。このエジプトへの逃避は、のちほどあらためて見ていきましょう。上の絵では比類なく純真に誕生が描かれていますね。みなさんは、クリスマス劇のなかに見られるものとの関連をお感じになるでしょう、もちろんクリスマス劇はもっと後の時代のものですが、本来は、もう残されていないもっと古いクリスマス劇に遡るものですから。

 さて今度は、十三世紀のニッコロ・ピザーノの場合で、説教壇レリーフに登場するモティーフを取り上げましょう。


683a 619  ニッコロ・ピザーノ  キリストの誕生

 ジオットの場合は


683b 20   ジオット   キリストの誕生

ごらんのように、すべては徐々に、自然主義的なもの、自然主義的な表現のなかへと成長していきます。


683c 637  ジョヴァンニ・デラ・ロッビア  キリストの誕生

ここでもう十五世紀です。

 さてこれは


683d 345  マイスター・フランケ  御子の礼拝

この絵はハンブルクにあります。私自身そう遠くない過去にこの地でこの絵を見たことを思い出します。

 今度はフィリッポ・リッピの《クリスマス》です。


684   フラ・フィリッポ・リッピ  子を礼拝するマリア

 時代の経過とともに、自然主義が表現をとらえていくようすがありありと見られます。次の絵は


685   ピエロ・デラ・フランチェスカ   キリストの誕生 -- クリスマス

です。さらにコレッジョへと進みましょう。


686   コレッジョ   キリストの誕生   ドレスデン

コレッジョの表現をもうひとつ


687   コレッジョ   子を礼拝するマリア   フィレンツェ

 さて今度はもっと北方のマイスターたち -- 前の話からみなさんも名前をご存じでしょう -- に移りましょう、まず最初はショーンガウアーによる《クリスマス》の表現です。


688a   ショーンガウアー  キリストの誕生

 イタリアのマイスターと北方のマイスターを続けて見ることができるのは非常に興味深いことです、前者ではなおもより大きな典型化、後者では個人化、及びこのように魂的なものからの創造が行われます。こう言ってもよいかもしれません、技術的な完成は南方のマイスターたちの場合ほど重要でないにしても、ここではやわらかな小さな足にいたるまで、すべてが魂的なのだ、と。

 今度は、ネルドリンゲンのヘルリンの絵、十五世紀の作です。


688b 347  フリードリヒ・ヘルリン   キリストの誕生

 ここでまさしく十五世紀末、十五世紀の最終期となり、今や十五世紀と十六世紀の転換期、デューラーに至ります。


688c 308   アルブレヒト・デューラー   キリストの誕生  木版画

 ここでもみなさんは、私が光表現について申しましたすべてを、まさしく技術がとらえていることにお気づきになるでしょう。デューラーの場合このことを研究するのは何度でも興味深いことです。

 次はデューラーの後継者であったアルトドルファーのものです。


688d 346   アルブレヒト・アルトドルファー   キリストの誕生

 さてここで、特に《羊飼いたちの礼拝》に関わる一連の画像を映していきましょう。

 最初は、聖書テキスト、福音書テキストのために描かれているかなり古い細密画で、


690a 248   細密画   羊飼いたちへの告知

980年頃のトリーアの手書き写本に含まれるものです。


689  細密画  羊飼いたちへの告知とキリストの誕生
    バジリウスのメノローギウム[Menologium des Basilius]より  11世紀

 さて今度は、《羊飼いたちの礼拝》のイタリア的表現に移りましょう、最初は


690b 6   チマブエ   羊飼いたちの礼拝

 ご存じのとおり、チマブエとともに私たちは十三世紀に立っています。今度はさらに、十五世紀のギルランダイオへと進みましょう。


692a 55   ギルランダイオ   羊飼いたちの礼拝

 ほかならぬこのマイスターについてはお話ししましたね。

 十五世紀もうひとりのマイスターはフィレンツェのピエロ・ディ・コジモです。


691   ピエロ・ディ・コジモ   御子の礼拝

 今度は、私たちがネーデルラント芸術として知っているものへと上昇しましょう。

 ここで、この絵の観察にかなりの時間を取ってくださるようお願いいたします。

 

692d,e 462,463  ヒューホー・ファン・デル・フース  御子の礼拝

 私たちはこのマイスター、フースについてもすでにお話ししましたね。


692b 560   レンブラント  羊飼いたちへの告知 エッチング



692c 527   レンブラント  羊飼いたちの礼拝


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