「四次元」

数学と現実

多次元空間に関する講義の聴講ノートと数学のテーマについての質疑応答

GA324a

Rudolf Steiner:Die Vierte Dimension 

佐々木義之訳

 

第二部

質疑応答 1904-1922


シュツットガルト 1920年3月7日

■質問:アインシュタインの理論によれば、1kgの質量の中には途方もない量のエネルギーが蓄えられていることになります。物質を破壊することによって−つまり、それを精神化することによって、新しいエネルギー源を取り出すことは可能なのでしょうか?  

 あなたが取り上げた問題は、私たちが今日議論した部分のアインシュタインの理論には直接は関係していません。物質を分裂させることによってエネルギーを解き放つことは確かに可能でしょう。理論的な側面はそれが特別に困難なことではないことを示しています。問題は私たちがこのエネルギーを用いるための技術を持っているかどうかです。私たちは解き放たれた巨大な力を利用することができるでしょうか? その力が、それを用いて動かそうとしているモーターを破壊するとすれば、それは不可能です。私たちはまずこの力を統御することができる機械的なシステムを開発しなければならないでしょう。純粋に理論的な観点から言って、大量の放射エネルギーをその利用のために解き放つためには、そのエネルギーに耐えることができる物質が必要なのです。そのエネルギーを解き放つこと自体は全く可能であり、それを解き放つのは利用することよりも遙かに容易なことです。

 

■質問:物質をまるごと取り除いて、エネルギーと放射だけが残るようにすることは可能でしょうか?

 ある意味では、真空管の中で起こっていることに見られるように、物質は取り除かれ、電流だけが残ります。速度だけが残り、そして、速度がこの現象に関係する数学的な定式において決定的な要素となっています。式 e=mc2 においてはエネルギーと質量が同時に現れていますが、いわゆる質量とはエネルギーとは異なるものである、という事実がそこで十分に考慮されているかということが問題なのです。 あるいは、私がこの式を書くときには、私は実際には同一のものをふたつのものとしてきわめて抽象的に分離していることになるのでしょうか? それが許されるのはポテンシャルエネルギーについてだけですが、その場合には、アインシュタインの式(e=mc2)はポテンシャルエネルギーについての古い式を新しいものであるかのように見せかけているにすぎません。

 

■質問:私たちはp×s(原注:仕事量wは力pに移動距離sをかけたものに等しい)を私たちの出発点として取ることができるでしょうか。

 ここで生ずる困難は、単に次のような理由によります。ある等級のシステムに属するふたつの構成要素を別のシステムに属するものと比較するとき−例えば、もし、二人の人間が一定量の仕事をこなすのにかかる時間を日没によって提供される要素と関係づけるならば−全体システムのなかでの過程は(と申しますのも、それはそのシステムのすべての構成要素に本当に適用され得るからですが)非常に容易に、いかなるシステムにも属さず、それ自身で自立することができるものの特徴を帯びることになるからです。太陽系から導かれる一年というような抽象的なことがらが別のシステムにおいても有効であると仮定すべきではありません。例えば、人間の心臓が5年の間にどんなに変わるものであるかを確かめるならば、ある人の心臓が5年前にどのような状態にあったかを現在との比較で記述することができます。けれども、単に同じ計算過程を続けて、150年前にはどうであったか、あるいは今から300年後にはどうなっているかと問うこともできます。

 天文学者たちは、地球の現在の状態から出発するとき、このようなことをやっているのです。彼らは時間の経過に伴う変化をきれいに計算しますが、現在の地球上における状態に関しては、300年後の人間の心臓に関する計算と同じくらい意味のないものです。私たちは、ひとつの過程に内在する時間に関して有効であるところの結論はその過程が終末に至るときには意味をなさなくなる、ということをいつも忘れてしまいます。このように、現時点で生きている全体システムとしての有機体を超越することは私にはできません。全体システムは私の概念がそのシステムの内部に留まるようにします。そして、私がその境界を踏み越えるとき、私は直ちにそのシステムを犯すことになるのです。有効であるかのように見えてしまうのは、私たちが等級的なシステムを全体システムの意味で関連づけ、そして、そのような等級的なシステムの内部でのみ適用される要素を絶対的なものとすることに慣れているからです。

(了) 


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