「四次元」

数学と現実

多次元空間に関する講義の聴講ノートと数学のテーマについての質疑応答

GA324a

Rudolf Steiner:Die Vierte Dimension 

佐々木義之訳

 

第二部

質疑応答 1904-1922


シュトゥットガルト 1921年1月15日

 

Q アインシュタインの問題に関する人智学的な立場の必要性についての質問。知覚可能な世界を離れてエーテル的なものに向かうとき、私たちは何故、突然記号を逆転させなければならないのか?

 もちろん、このことは、特別に人智学的な立場を取ることなく、他の多くの科学分野においてなされているように、単にその現象を研究することによってもなされ得ることです。(私は、数ヶ月前、少数の聴衆のためにここで行った講義の中で、いわゆる熱理論の現象に関する偏見のない観点を示しました。)その場合、私たちはこれらの現象を数学的な定式の中で表現するように努めなければなりません。そのような定式の奇妙な特徴とは、私たちが観察することができるプロセスに対応した定式だけが、つまり、その結果が現実に対応し、現実によって検証することができるような定式だけが正しい、ということです。もし、皆さんが、圧力容器の中のガスが熱せられたときに何が起きるかを理解したいのであれば、クラウジウスやその他の人々によって考え出された定式をそれに適用することは可能ですが、それは人為的なものとなります。今日、公式に認められていることですが、事実は定式には一致していません。

 アインシュタインの理論との関連で行われた実験を記述するというのは奇妙なことです。これらの実験は、ある理論が正しいという仮定に基づいて設定されましたが、その実験はその理論を確認しなかったので、思考の中だけに存在する実験のみに基づいて、別の理論が打ち立てられました。これとは対照的に、もし、皆さんが熱現象を扱うとき、それが伝導熱であるか放射熱であるかの違いによって、適当な正あるいは負の符号を単に定式に挿入することによって処理しようとするならば、現実が定式を確認する、ということが分かります。

 他の推し量ることができないものへと移行するときには、単に符号を負に変えるというのは不十分であり、私たちは確かに別のことも考慮しなければなりません。私たちは、知覚可能な領域における力は放射的に働くのに対して、エーテル的な領域に属する力は周辺からやって来るため、負の値を有しており、円周の内部でのみ働く、と想像しなければなりません。このように、私たちが他の推し量ることができないものへと移行するときには、別の対応する値を挿入しなければなりません。そのときには、実際の現象によって検証される定式に至る、ということが分かるでしょう。人智学に関係するかしないかに関わらず、誰でもこのアプローチを取ることができます。

 私はここで別の点を強調したいと思います。私がこれらの4つの講義の中で皆さんにお伝えしたことは私の人智学的なアプローチから出てきた、と考えるべきではありません。私がこれらのことがらをお話ししたのは、それらが真実だからです。いわゆる人智学的なアプローチは現象を予測するのではなく、現象から結果として生じるのです。それは適切な概観の結果に過ぎません。私たちが偏見なく対象やできごとを認め、理解しようとするならば、その結果として、人智学的なアプローチが生じることができるのです。もし、私たちが自分の出発点として偏った観点を取らなければならないとしたら、私が皆さんにお話ししたことに対する見通しは貧弱なものになるかも知れませんが、そういうことではありません。私たちは厳密に経験的な基礎の上に立って、適切な現象を追求しなければなりません。それでも私は、人智学的なアプローチがベストである、と主張したいのですが、それは単に結局はその結論になったということに過ぎません。

(別の質問に答えた後、ルドルフ・シュタイナーは次のように結論づけた。)

 私が繰り返して強調することができるのは、ここシュツットガルトで発展している人智学を指向した精神科学は党派的あるいはアマチュア的な運動ではない、ということだけです。確かにその力はまだ弱いものですが、それは現実的で権威ある科学を目指しています。皆さんが精神科学を検証すればするほど、ますます皆さんは、それはいかなる科学的な検証方法にも耐え得るものである、ということに気づかれるでしょう。

 精神科学が今日被っている多くの誤解は、真に科学的なアプローチがなされた結果として生じたものではありません。その敵対者達が精神科学と戦うのは、彼ら自身があまりにも科学的過ぎるからではなく、十分に科学的ではないからです。そのことはさらなる検証によって示されるでしょう。けれども、未来において、私たちはより少なく科学的になるのではなく、むしろより科学的にならなければなりません。科学は真の発達を遂げるべきです。つまり、科学は、私たちを物質の領域へと導いたのと同様の正確さをもって、私たちを精神的な領域へと導かなければなりません。

(了) 


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