「四次元」

数学と現実

多次元空間に関する講義の聴講ノートと数学のテーマについての質疑応答

GA324a

Rudolf Steiner:Die Vierte Dimension 

佐々木義之訳

 

第二部

質疑応答 1904-1922


ドルナッハ 1921年8月26日

 質問:太陽は空間中を螺旋状に移動しており、地球は太陽を追いかけるようにして螺旋状に移動しているのであって、太陽の周りを周回しているわけではない、と理解すればよいのでしょうか?

 もう少し長い連続講義であったならば、これらの問題をより詳細に議論することは比較的容易だったでしょう。ここでは、ごく簡単にそれらの問題に言及しただけです。その根底に横たわるものを2、3の言葉で述べるのはほとんど不可能です。あなたの質問に答えるに当たっては、精神科学的な探求の結果を簡単に要約することから始めたいと思います。まず、宇宙における空間的な関連について、観察や特定の観点から私たちが引き出す結論は、それがいかなるものであれ、いつも一面的なものなのですが、プトレマイオスの太陽系が一面的な観点を示しているように、コペルニクスのモデルを含む他のすべての太陽系に関するモデルもまた一面的なものです。移動する物体間の関係についての私たちの結論は私たちの特定の観点に基づいていますが、これらの関係はその観点からは測定され得ない動きによって不可避的に補足され、変化させられます。

 以上の前提を注意事項として述べましたが、私たちが地球と太陽の動きの関係についての見方を発達させるのに役立つ別の精神科学的な発見について考える、ということを皆さんにお願いしたいと思います。太陽は空間中で曲線を描いて移動していると想像しなければなりません。もし、この曲線を十分に遠くまで辿るならば、それは複雑な螺旋形状をしていることが分かります。それを簡単にしたものはこのように見えます(図65a)。

図65a

 地球は太陽を追いかけて同じ軌道を進みます。皆さんが太陽との関係で地球がどこに位置しているかを考察するならば、地球がここにあるときには、観察者が太陽を見るためには、右の方を見なければならない、ということが分かります。さて、可能性のある別の配置を図示してみましょう(図65b)。

図65b

 矢印は見る方向を示しています。最初の例では、ある一方向からの視点で太陽を見ましたが、今は反対方向からの視点でそれを見ます。容易に理解できると思いますが、このモデルを正確に視覚化するならば、地球は太陽を追いかけていますから、私たちは最初に一方向から、そして、次に別の方向から太陽を見ることになり、地球が太陽の周りを円周状あるいは楕円状の軌道を描いて回っているように見えるのです。この動きの第一義的な要素、つまり、地球が太陽を追いかけているという事実は、ある別の関係性によって、さらに明確にすることができますが、それを説明するとすれば、何時間もかかってしまうでしょう。けれども、肝心なのは、単に私たちの見る方向だけが回転する、という点です。

 お話ししたように、この要約は長期にわたる精神科学的な探求の結果を示すものですが、その他の関係を考慮するとすれば、さらに複雑なことになります。太陽の動きについてのよりよい概観を得ようとするとき、私たちが気づかなければならないのは、コペルニクスの体系を生徒のために描いてみせるために私たちが使う単純な線がますます複雑になり、ついには全く描くこともできず、すべてが空間の領域から滑り落ちてしまう、ということです。私が精神科学の観点からお話ししようとしたのはこのようなことです。

 物理的な科学の歴史的な観点からコメントするならば、上で概観した探求の結果について、今日、非常に衝撃的であると思われることは、コペルニクス的な見方の中に本来備わっているものです。コペルニクスは三つの法則を考え出しました。最初の法則は、地球が自転しているということ、第二の法則は、地球が太陽の周りを公転しているということ、第三の法則は、概念的なレベルでは、地球の公転は単に暫定的な説明を提供するに過ぎないということです。ところが、実際には、地球の太陽に対する関係は固定的なものなのです。

 この第三法則は、コペルニクスがその第二の動き、つまり、太陽を巡る地球の回転を記述したとき、それは単にある種の計算を便利に行うための方便として仮定したのだということを確信しており、それを事実として述べるつもりはなかったということを証明しています。今日、私たちはいつもこの第三法則を無視し、太陽系に関するコペルニクスのモデルは第一と第二法則だけを包含している、と思いこんでいます。けれども、もし、私たちがコペルニクスの観点を本当に研究するならば、単に天文学的な計算に基づくだけで、この第三法則は本当に必要なものである、ということがすぐに分かるでしょう。ご存じのように、このようなことは科学の歴史の中ではよく起こることです。


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