ルドルフ・シュタイナー

神秘学の記号と象徴

そのアストラル界と霊界との関係

第四講

シュトゥットガルト 1907年 9月16日

黙示録の封印。(1907年3月の)ミュンヘン会議の祝賀ホールにおける封印の説明。人類進化の像としての黙示録の七つの封印。薔薇十字のシンボル。封印が人間に及ぼすことのできる生気を与え啓発する影響について。さらに、霊的なものが世俗化されるときの破壊的な作用について。


 象徴や形象のうち、そもそも私たちが所有していて古今の神秘学者たちからも認められている最も意味深長なものは、人間自体です。人間は、今も昔も、常にミクロコスモス、小宇宙と呼ばれてきました。これは、まったく正当な言い方です。というのも、人間を詳細に綿密に知るようになる人には、ますます人間のうちに人間の外部の自然の中に広がっているあらゆるものが含まれていることが明らかになってくるからです。このことを理解するのは、はじめは困難かもしれません。けれども、これについて思索を深めれば、人間のうちには全自然からとった一種のエキス、精髄、あらゆる実質と力が見いだせるということの意味を理解できるでしょう。皆さんが何らかの植物をその本質という点に関して研究し、充分深く探求することさえできれば、人間の有機体組織の中に、より食傷された形ではあっても、同じ本質が含まれていることがおわかりになることと思います。さらに、外にいる動物を考えてみてください。皆さんは常に、人間の有機体組織の中に、その本質に従って、あるやり方でその組織中に取り込まれているいるように見える何かを指摘することができるでしょう。

 このことを正しく理解するためには、もちろん宇宙の進化を神秘学(オカルト)的観点から考察することが必要です。それで、たとえば神秘学者(オカルティスト)は、もし外部の自然の中にライオンが存在しないなら、人間は決して今日のような性質の心臓を持つことはないということを知っています。まだライオンというものが存在しなかった時代へと遡ってみましょう。人間は最も古い存在ですので、その当時にも人間はいました。けれども、その時の人間はまったく別様に形成された心臓を持っていたのです。自然の中には、至る所に、もちろん必ずいつも明白ではないにしても関連があります。かつて人間がはるか太古の時代に自らの心臓を今日の形態へと発達させた時、その時にライオンが生じました。両者は同じ力を形成したのです。それは、あたかも皆さんがライオンの本質を抽出し、神の如き巧みな技により、それから人間の心臓を形成したかのようです。皆さんは人間の心臓には何らライオンのようなものはないとお考えになるかもしれませんが、神秘学者(オカルティスト)にとってはこれは本当なのです。あるものがひとつの関連、ひとつの有機体組織の中に置かれる時、それが独立状態にある時とはまったく別の作用をすることを忘れてはいけません。逆のこういうふうに言うこともできます。皆さんが心臓のエッセンスを取り出すことができたとして、この心臓に相応した存在を作り出そうとするなら、そしてその存在が有機体組織の諸力に規定されないなら、それはライオンになるのです。勇敢さ、大胆さといった特性、あるいは神秘学者(オカルティスト)が言うような人間の「王者らしい」特性のすべてはライオンとの関係に由来します。そして、秘儀参入者であったプラトンは、王者のような魂を心臓の中に置いたのです。(注/プラトン「国家」では勇気(thymos)はホメロスに従って心臓に置かれる)

 人間と自然のこのような関係に対して、パラケルススはたいへん見事な比喩を用いました。彼は、「それはあたかも自然の中でひとつひとつの存在が文字であるかのようだ。けれども人間はこれらの文字から組み立てられた言葉なのだ。」と言います。外には大いなる宇宙−マクロコスモス、私たちのうちには小なる宇宙−ミクロコスモス。外ではいかなるものもそれ自体として存在し、人間にあっては他の器官も共に織り込まれているハーモニーによってすべてが規定されているのです。そして、だからこそ私たちは人間の中に全宇宙の進化、私たちの一部をなす全宇宙の進化を観照することができるのです。

 皆さんは、私たちの一部をなしているこの宇宙との関連における人間進化の像(すがた)を、ミュンヘンでの会議期間中、祝賀ホールに掲げられていた封印の中に見ることができます。何が示されているか見てみましょう!

 最初のものは、白い衣をまとった人物を示しています。その両足は金属、青銅のようです。口からは炎の剣が突き出しています。彼の右側は諸惑星−−土星、太陽、月、火星、水星、木星、金星の記号で取り巻かれています。ヨハネ黙示録をご存知の方は、黙示録の中に、この像とかなり一致する記述が見られることを思い出すことでしょう。ヨハネは秘儀参入者であったからです。この封印は、つまり、言うならば、人類全体の理念を提示しているのです。ここにおられる古参の方々にはすでにおなじみの表象をいくらか思い出していただくと、このことを理解できると思います。

 人間の進化をさかのぼっていくと、人間がまだ不完全な段階にある時代に到達します。例えば、人間は、皆さんが今日両肩の上にのせているもの、つまり頭部をまだもっていませんでした。当時の人間を描写すると本当にグロテスクに聞こえるでしょう。つまり、頭部はだんだんと発達してきたのであり、さらにこれからも進化していきます。人間においては今日、いわば終結に達した器官があります。自らを作り変えていく別の器官もあります。そう、喉頭は力強い未来を有しているのです。むろん、心臓とも関連しています。今日、人間の喉頭はようやくその進化の始まりにあって、将来、霊的なものに作り変えられた生殖器官となっていくのです。今日の人間が喉頭を使って行っていることを明らかにすれば、この神秘についての表象を得ることができるでしょう。ここで私が話しますと、皆さんに私の言葉が聞こえます。このホールが空気に満たされていて、この空気中に一種の振動が引き起こされることにより、私の言葉が皆さんの耳に伝達されるのです。私がひとつの単語、例えば「宇宙(ヴェルト)」という語を発音すると、空気の波が振動します。−−これは私の言葉の受肉(物質化)です。今日、人間がこのように作り出すものは、鉱物界における創造と呼ばれています。空気の運動は、鉱物的な運動です。喉頭を通じて、人間は環境に鉱物的に働きかけているのです。けれども、人間は、自らを高め、いつか植物的にも働きかけるようになるでしょう。単に鉱物的な振動だけではなく、植物的な振動をも引き起こすようになるでしょう。人間は、植物を出現させるでしょう。その次の段階は、感受する存在を肩って出現させるでしょう。そして、進化の最高の段階では、人間は自らの喉頭によって自分に似たものを生み出すでしょう。今日、人間は魂の内容のみを言葉によって語ることができますが、その時には自分自身をそのまま言い表すようになるのです。そして、人間が未来において存在を方って出現させるように、人類の先駆者である神々は、今日存在するすべてのものを語って作り出した器官を備えていたのです。神々はすべての人間、すべての動物、そしてその他すべてを語って生み出しました。これらはすべて字義どおりの意味において発せられた神々の言葉なのです。

 「初めに言葉があった。言葉は神のもとにあった。言葉は神であった。」これは、思弁的な意味での哲学的な言葉ではありません。まったく字義通りにおこなわれた太古の事実をヨハネは提示したのです。

 そして、終わりにも言葉が言葉があるでしょう。言葉の具現が創造であり、人間が未来に置いて生み出すものは、現在言葉であるものが具現化したものなのです。けれども、その時には、もはや人間は今日のような物質的形態はとらないでしょう。人間は土星上でとっていたような形態、火の実質にまで進歩しているでしょう。このように宇宙進化の始まりにおける創造的な力は宇宙進化の終わりにおける私たち自身の創造する力と結びついているのです。

 今日あるすべてのものを宇宙の中に言葉で出現させた存在は、人間の偉大な模範です。この存在は、宇宙に土星、太陽、月、地球−−地球は半分ずつで火星−水星−−、木星、金星を出現させました。この七つの星が暗示しているのは、これらは人間がどの程度まで進化できるかを表す記号であるということです。火の実質の中に、この惑星は最後に再び現れ、人間はこの火の実質の中で創造的に語ることができるでしょう。これが口から突き出ている火の剣なのです。すべては火のようになります。従って、両足も溶けた青銅なのです。見事に印象深く、進化の意味がこの記号(しるし)に表されています。

 今日の人間を動物と比較してみますと、その違いは「人間は個々人として、個々の動物が自らのうちに有してないものを、自らのうちに有している」と言わなければならないということに表されています。人間は個人の魂を持ち、動物は集合魂を持つのです。人間のひとりひとりがひとつの動物の属全体にあたります。例えば、すべてのライオンは共通でひとつの集合魂を持つのみです。この集合・自我は、人間・自我とまったく同じですが、ただ集合・自我は物質界にまでは下降しません。アストラル界でのみ見いだされるのです。この地上では、各々が自我を担っている物質的人間が見いだされます。アストラル界では、皆さんはアストラル実質の中で、皆さん自身と同じような存在と出会います。ただ、物質ではなくアストラル的な覆いの中で出会うのです。皆さんは、皆さんのような人と話すように、彼らと話すことができます−−これが動物の集合魂です。

 人間も以前の時代には集合魂を持っていたのですが、次第次第に今日の独立した存在へと進化してきたのです。これらの集合魂はもともとアストラル界にあり、それから肉の中に宿るために下降してきました。今、アストラル界の中に人間の原初の集合魂を探してみますと、人間の由来である四つの種類が見いだせます。この四種を、今日の動物の属をなしている集合魂と比較しようとすると、次のように言わねばならないでしょう。四種類のうちのひとつはライオン(獅子)と比較される。もうひとつは鷲と比較される、三つめは牛と、四つめはその自我が下降してくる前の太古の人間と比較できる、と。けれども、さらに人間のより高次の顕現のための集合魂、つまり子羊、救い主の徴(しるし)である神秘の子羊により示される集合魂も存在しますし、地球が存在する限り、これからも存在するでしょう。これら五つの集合魂の分類−−すべての人間に共通する偉大な集合魂を取り巻く人間の四つの集合魂−−これを第二の図像は描き出しています。

 私たちが人間の進化をはるか彼方までさかのぼっていくと、何百万年もの助けを求めなければなりませんが、また別のものが現れてきます。現在、人間は物質的に地球上にいます。しかしながら、この地球上を動き回っていたものが、まだ人間の魂を受け取ることができなかった時代もあったのです。その時、この魂はアストラル界にありました。そして、さらにさかのぼると、この魂が霊界、すなわちデヴァチャンにあった時代に至ります。魂は、地球上で自らを浄化したあかつきには、未来において再び、この高次の段階に上昇するでしょう。霊からアストラル的なものを経て物質的なものへ、そして再び霊へ…これが人間の長い進化の道のりなのです。けれども、これを人間が土星及び他の惑星状態で経てきた進化の時間と比べると、短期間のように思われます。人間は単に物質的な変化のみではなく、霊的、アストラル的、物質的変化を遂げてきたのです。こうした変化を追求していくと、霊的世界にまで上昇しなくてはなりません。そこでは、天球の音楽、この霊的世界で空間にみなぎりあふれている音が知覚されます。そして、再び人間がこの霊的世界に慣れていくと、この天球のハーモニーが彼に向かって響きわたるでしょう。これがオカルトでは天使のラッパの響きと呼ばれるのです。従って、第三の図像はラッパです。霊的世界から啓示がやってきますが、それは人間がなおいっそう進歩を遂げたときはじめて、姿を現すのです。それから、人間に七つの封印を施された書物が開示されるでしょう。この封印はまさに私たちがここで考察しているものです。これらの謎が解かれるでしょう。ですから、中央には書物、下部には人類が置かれます。というのも四頭の馬は、時代を経てきた人類進化の諸段階に他ならないからです。

 けれども、もっと高次の進化があります。人間は、もっと高次の世界に起源を持ち、そして再びこの高次の世界に上昇していくでしょう。その時、人間が今日とっているような形態は世界の中へ消えていくでしょう。今日、外の世界にあるもの−−人間を構成している個々の文字−−を人間はその時、再びすべて受け取っているでしょう。人間の形態は世界の形態と一致していることでしょう。神智学のある種の通俗的な記述において、自分自身の内に神を探し求めると教えたり語ったりされています。けれども、神を見出そうとする者は、万有のうちに広がっている神の作品のうちに神を探し求めねばなりません。宇宙の中の何ものも単なる物質−−それは単に見かけ上そうであるにすぎません−−ではありません。実際はすべて物質は霊的なものの現れ、神の活動の知らせなのです。そして、人間は来るべき時代の経過において、自分の本性をいわば拡大していくでしょう。ますますいっそう人間は世界と一体化し、人間の形態の代わりに宇宙(コスモス)の形態を置くことで、自らを提示することができるのです。このことは、岩、海、円柱を備えた第四の封印に見いだせます。今日、雲として世界を通り過ぎてゆくものが、人間の肉体を形づくるための素材を提供するでしょう。今日、太陽の霊のもとにある諸力が、さらに限りなく高められたやり方で、霊的な諸力を作り出すことになるものを、未来において人間にもたらすでしょう。この太陽の力こそ、人間が手に入れようと求めるものなのです。自分の頭部、つまり根を地球の中心に向けて沈めている植物とは反対に、人間は頭を太陽に向けています。そして、人間は頭を太陽と合体させ、より高次の力を受け入れるでしょう。このことは、岩と円柱の上の雲の体にある太陽の顔の中に見てとれるでしょう。その時、人間は自らを創造するものとなっているでしょう。そして、完全な創造の象徴として、多彩な虹が人間を取り巻いています。ヨハネ黙示録の中にも、皆さんはよく似た封印を見いだせるでしょう。雲の中に書物があります。黙示録では、秘儀参入者がこの書物を飲み下さねばならないと語られています。これによって、人間が単に外的に叡智を受けることができるだけでなく、今日食物で自らを満たすように、叡智で自らを満たし、自身が叡智を体現するようになる時が告げられているのです。

 それから、宇宙における大いなる変化が目のあたりに怒る時に近づきます。人間が太陽の力を引き寄せてしまうと、太陽が再び地球と一体化するというあの進化段階がはじまります。人間は、太陽の力により太陽を生み出すでしょう。ですから[第五の封印では]太陽を生む女なのです。その時、人類は非常に道徳的、倫理的になっているので、低次の人間本性の中にある有害な力はすべて克服されているでしょう。これは、七つの頭と十本の角を持つ動物によって描かれています。太陽の女の足下に、地球が用いることができず押し出していなかったあらゆる有害な実質を含む月があります。今日、月が魔術的な力で地球上でなしてることはすべて、その時に克服されるでしょう。人間が太陽と一体になるとき、人間は月を克服したのです。

 続いて[第六の封印で]、このように高次の霊化にのぼりつめた人間がいかにミカエルの形姿に似ているかが表されています。ミカエルは、この世の悪いものを龍の象徴(シンボル)の中につなぎとめているのです。

 私たちはあるやり方で人類進化の初めと終わりが同じ変化の状態であることを見てきました。この同じ状態が、流動する火の足を持ち口から剣を突き出した男の中に描かれていることがわかりました。意味深い象徴学においては、私たちに宇宙の全存在が聖杯の象徴において明かされます。皆さんにこの第七の封印について二、三概略的にお話しておきたいと思います。

 神秘学者(オカルティスト)としてこの世界を知ることを学ぶ者は、空間というものが物質的世界にとって、単なる空虚なものとはまったく別の何かであるということを知っています。空間は、すべての存在をいわば物質的に結晶化させて出現させてきた源泉なのです。水で満たされた完全に透明なガラス製の立方体の器を考えてください。さて、それからある冷却する流れがこの水を貫いて導かれ、さまざまなやり方で氷が形成されるのを思い浮かべてください。こういうふうにして、世界創造のひとつの表象、つまり空間を得ることができます。この空間の内部へと神的な創造の言葉が発せられ、ありとあらゆる事物が結晶化し生み出されたのです。

 神的な創造の言葉が内部に発せられたこの空間を、神秘学者(オカルティスト)は水のように透明な立方体によって表します。この空間の内部でさまざまな存在が発達していきます。私たちの最も近くにある存在を、立方体は三つの垂直方向、つまり三本の軸、長さ、高さ、幅を持ち。これが立方体の三つの次元を示しているということで、最もよく特徴づけることができます。さて、これらの、外の自然界にある三つの次元に反対の次元を加えると考えてみてください。皆さんはおよそ次のように想像することができます。ひとりの人物がある方向に進み、もうひとりが彼に向かってやってきて両者がぶつかる、というふうに。同様に、各空間次元にも、それぞれ反−次元が存在するのです。従って、私たちは全部で六本の線を持つことになります。これらの反対線は同時に人間存在の最高の構成要素の原初的萌芽を表しています。空間から結晶化された物質体は、最も低次のものです。霊的なもの、最高のものはその反対物で、反−次元によって示されます。ここで、進化において、まず最初に、激情、欲望、本能の世界に合流させることで、最もよく描かれ得る存在、こういう存在の反−次元が形成されるのです。最初、これはそういう存在です。それから、のちに何か別のものになります。ますますいっそう、この存在は自らを浄化していきます−−どれほど浄化されるか、私たちは見てきましたが−−が、もとは蛇によって象徴される低次の衝動から出発してきたのです。この経過が互いに向き合った二匹の蛇の中での反次元の融合によって象徴されているのです。

 人類は自らを浄化することで『宇宙の螺旋』と呼ばれるものへと上昇します。浄化された蛇の体、この宇宙の螺旋は、深い意味をもっています。皆さんは、これについて次のような例でひとつの概念を得ることができます。現代の天文学はコペルニクスの二つの法則に基づいていて、第三の法則は顧みられず放置されています、第三法則は、太陽もまた動いているというものでした。太陽は、前方へねじれながら進んでいて、その結果、地球は太陽とともに複雑なカーヴを描いて運動しているのです。同じ事が、地球の回りを運動している月にもあてはまります。これらの運動は、初歩の天文学で受け入れられているよりもはるかに複雑なのです。螺旋が天体のなかでどのような意味をもっているのか、ここでおわかりでしょう。この天体は、将来、人間と一致するような形態を表しているのです。その時には、人間の生み出す力は浄化され、純化されているでしょう。人間が浄化された蛇の体として進化させていったものは、その時、もはや下から上へではなく、上から下へと作用することでしょう。私たちの中で変化した喉頭は、聖杯(グラール)と呼ばれる杯になるのです。そして、この生み出す器官と結びついているもうひとつの器官も同様に浄化されているでしょう。この器官は、宇宙の力の精髄(エキス)、大いなる宇宙の精髄となるでしょう。精髄の中のこの宇宙霊は、聖杯にむきあう鳩の図像で描かれています。ここで、鳩は、人間がいつか宇宙(コスモス)と一体化する時に、宇宙から働きかける霊化された授精作用の象徴なのです。この出来事の想像力全体が、虹によって示されています。これはすべてを包括する聖杯の封印なのです。

 これ全体が、宇宙と人間の関係についての意味を、驚くべきやり方で他の封印の意味もまとめるようにして伝えてくれます。従ってここにも封印の周囲の縁に書かれた文字として、宇宙の秘密が現れています。この宇宙の秘密は、人間が原初に根源の力から生まれてきたことを示しています。どんな人間も、振り返ってみれば、意識の力から新しく生まれたなら、今日霊的に成し遂げている過程を、原初の時代に経てきたのです。薔薇十字会ではこのことを(頭文字で)E.D.N=[ex deo nascimur](神から生まれた)と表します。

 開示の内部では、第二のものが加わることを見てきました。すなわち、生のための死です。人間は、この死の中で再び死を見出すために生きとし生けるものすべての源泉の中で、この感覚の死を克服せなばなりません。この源泉は、すべての宇宙進化の中心点なのです。というのも、私たちは、意識を獲得するためには死を見出さねばならないからです。しかし、私たちはこの死の意味を救い主の秘密の中に見出すとき、死を克服するでしょう。神から生まれたのと同様、私たちは秘教的な叡智の意味で、キリストにおいて死ぬのです。I.C.M[im Christo morimur](キリストにおいて死ぬ)

 そして、何かが開示される所ではどこでも、第三のものに統一されるべき二元性が示されるので、人間は死を克服したとき、自らが、宇宙を貫く霊(鳩)と一体化することでしょう。人間は復活し、再び霊のうちに生きるのです。P.S.S.R=[per spiritum sanctum reviviscimus](聖霊により復活する)

 これが、神智学的薔薇十字です。これは、宗教と科学が宥和する時代を照らすのです。

 さて、以上のとおり、このような封印には、宇宙全体が描かれており、しかも宇宙は魔術師や秘儀参入者によって、この中にくみ入れられたため、封印には強い力が内在しています。皆さんは、いつも新たにこれらの封印にもどってくることができます。封印は、瞑想を通して無限の叡智を開くことができるということを、皆さんは改めて見出すことでしょう。封印は、宇宙の秘密から創られていますので、人間の魂に強力な影響を及ぼします。今日ここでお話しているような、宇宙の聖なる神秘へと高めてくれるような、そうした事柄が語られている部屋に、こうした封印を掲げるなら、それらは、人にそれと気づかれなくても、最高度に生き生きと啓発する作用を及ぼします。けれども、同時に、こういう意味をもっているからこそ、世俗化されることを嫌います。奇妙に聞こえるかもしれませんが、霊的なことは何ら語られず、俗っぽい言葉が語られている部屋にこういう封印がぐるりと掛けてあると、やはり作用は及ぼすものの、この場合、肉体組織を病気にするような作用をするのです。通俗的な言い方かもしれませんが、封印は消化を損なうのです。霊的なものから生まれたものは、霊的なものにふさわしく、世俗化されてはなりません。このことをそれ自身がその作用によって示しているのです。霊的な事柄の記号は、霊的な事柄が起こり、作用を得る所にふさわしいのです。


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